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一触即発の父親に、妻が投げかけた意外な一言
そのとき、それまで黙って聞いていた美穂さんが口を開きました。
「大学はいい会社に入るためだけに行くところじゃないって、翔に言っていたじゃない」
誠さんは返す言葉に詰まりました。実は、翔さんが大学進学を希望した際、誠さん自身が「大学ではいろいろなことを学んで、自分のやりたいことを見つけてほしい」と話していたのです。
偏差値の高い大学に進学できたことを喜び、息子の可能性に期待していました。しかし、いざ卒業が近づくと、いつの間にか「有名大学を卒業するのだから、安定した会社に就職するはずだ」と考えるようになっていました。
「もちろん、何の計画もなく海外に行くのは反対。でも、最初から否定するのは違うんじゃない?」
誠さんも、息子の関心そのものを否定したいわけではありません。ただ、収入の見通しもないまま海外に出て、帰国後も進路が決まらなければ、結局は親に頼ることになるのではないか。その不安がありました。
「じゃあ、半年間海外に行くとして、いくら必要なんだ。帰ってきた後の生活費はどうする?」
誠さんが尋ねると、翔さんは少し考えてから答えました。
「旅費はアルバイトで貯めたお金を使う。帰ってきたら、国際協力につながる仕事を探す」
まだ具体性に欠ける計画です。それでも、本人が自分なりに将来を考えていることは伝わってきました。誠さんは、海外に行くこと自体を認めるかどうかではなく、旅費や帰国後の生活を含め、計画を具体的に示すよう求めました。親が負担するのは学費までで、卒業後の生活費まで出し続けるつもりはないことも伝えます。
厚生労働省と文部科学省の調査では、令和8年3月に卒業した大学生の就職率は、同年4月1日時点で98.0%でした。ただし、これは就職を希望した学生のうち就職した人の割合です。大学卒業後の進路はさまざまであり、就職だけが唯一の選択肢というわけではないのです。