(※写真はイメージです/PIXTA)
「やっぱり、またやめます」
しかし、話はそこで終わりませんでした。しばらくすると、また連絡がありました。
今度は、やっぱり購入をやめたい。どうしたらいいでしょうか、という相談です。
私は、ご夫婦がマンションそのものを気に入っていたのだと思います。
しかし、住宅ローンを返済しながら、そのマンションで何十年も暮らしていく生活を具体的に想像できていなかったのかもしれません。
内見すると購入したくなる。返済を考えると不安になる。その繰り返しだったように感じます。
ただし、すでに売買契約を締結しています。さすがに今回は、ある程度の金銭的な負担を覚悟する必要があるとお伝えしました。私は、違約金として最大20%、860万円程度の負担も覚悟する必要があると説明しました。さらに、仲介手数料の一部が請求される可能性もあります。仮に約60万円を請求されたとすると、合計約920万円です。
もちろん、違約金が必ず20%になるわけではありません。実際の負担は契約条項や解除の条件などによって異なります。それでも、数百万円単位の負担が生じる可能性があります。
私は、売主と仲介不動産会社に事情を説明し、負担を軽減してもらえるよう交渉するしかないと伝えました。
相手方には契約に基づく権利があります。その権利を行使せず、譲歩してもらえるかどうかは、相手方の判断です。
そして、とにかく早く話をするべきだとアドバイスしました。
違約金215万円。それでも「払わないといけませんか?」
その後、ご夫婦から再び連絡がありました。
売主との話し合いで、売買代金の5%を違約金として支払うことで了承してもらえたというのです。4,300万円の5%ですから、215万円です。当初想定していた最大860万円の違約金と比べれば、大幅に軽減されています。
ところが、ご夫婦からは、さらに質問がありました。
「払わないといけないですか?」
「どうしたらいいですか?」
最大920万円程度の負担も覚悟していたことを考えれば、売主は相当譲歩してくれたと思います。
私は、三度目の「よかったですね」をお伝えしました。
「それで済んでよかったですね」
売主にも事情があり、仲介不動産会社も契約成立に向けて仕事をしています。買主が何度も考えを変えた結果、相手方が違約金を減額することで了承してくれたのであれば、それは相当な譲歩だと思います。
住宅購入は、人生の中でも大きな買い物です。不安になることも、購入を迷うこともあるでしょう。しかし、契約を締結する前に迷うことと、契約を締結した後に考えを変えることでは、責任が違います。
ご夫婦からの連絡は、それが最後でした。215万円を支払って契約を解除したのか。それとも、また気持ちが変わってマンションを購入したのか。
私は、その結末を知りません。
竹下 昌成
竹下FP事務所 代表
日本FP協会認定CFP・TAC講師