(※写真はイメージです/PIXTA)
50代、ほどよい距離が難しい「SNSとの付き合い方」
「いつでも誰かと繋がっている感覚は楽しかったのですが、気づけば家族と過ごしている時間さえスマホの画面ばかり気にしていました」
地方の中堅企業に勤めるヒロキさん(51歳)。共働きの妻と息子の3人で暮らし、月収は約33万円。暇つぶしのつもりでX(旧Twitter)を始めたのは、いまから10年ほど前のことでした。
当初は「いまどこにいる」といった短い近況をつぶやくだけのツールだと思っていましたが、実際に使いはじめると印象が一変します。発信に対するリアルタイムの反応や、会ったこともないユーザーからの共感、時にはDM(ダイレクトメッセージ)や通話機能で悩みや趣味の相談をし合うなど、インターネット上の人間関係は急速に膨らんでいきました。情報のスピード感に戸惑いながらも、日常では味わえない広がりに「やっていてよかった」と感じていました。
しかし、年月が経つにつれてSNSは生活を少しずつ浸食していきます。無意識のうちにスマホを手に取り、通知やタイムラインを四六時中チェックする日々。家族から話しかけられても生返事で返してしまうことが増えていきました。
オンライン上の交流は魅力的な反面、タイムラインにはネガティブなニュースや激しい意見対立も絶え間なく流れてきます。情報過多による脳の疲労感を覚え、何度も「やめよう」と思い直したものの、なかなかアプリを手放せずにいました。
転機となったのは、成長した息子との接し方をめぐる妻との話し合いでした。
「あと数年もすれば子どもも高校生になり、親よりも友人や外の交友関係を優先するようになる。子どもが親と一緒に過ごしてくれるいまのうちに、家族でたくさん出かけよう」
妻の言葉にハッとしたヒロキさんは、私生活へ意識を集中させるため、まずは半年ほど距離を置いていたXのアプリをスマートフォンから削除しました。もしアカウントを維持したまま家族と出かけていたら、現地でも写真を撮影しては投稿し、寄せられる反応ばかり気にしていたはずだと振返ります。
その後、ヒロキさんは人間関係も整理する決意を固め、X以外のSNSやLINEアカウントもすべて削除。連絡手段を電話番号とメールアドレスを知る限られた知人のみに絞り込みました。「意外と不便でもないです。リアルの友人も少ないですし、親は高齢でガラケーを使っているので、もともと連絡手段としては利用していませんでした。もはやスマホである意味もない気がするので、携帯代もばかにならないし、ガラケーに戻そうかとすら思っています(笑)」。全削除はやや極端な決断にも見えますが、ヒロキさんの場合、いまのところ、生活に支障は出ていないそうです。
「SNS上で繋がっていた人たちとはアプリの中だけの関係だったため、アカウントを消したことでつながりは途切れました。少し寂しい気持ちもあります。SNSを楽しみながら私生活と上手に両立できている人が羨ましくもありますし、自分には合っていなかったのかと考えたりもします。ただ、同世代でも日常的に使いこなしている人は多いのが現実です」
画面から目を離したことで家族との時間は濃密になったものの、デジタル空間のつながりを全消去したあとに残る特有の静けさと寂しさ。ヒロキさんはその双方を実感しながら、新たな日常を送っています。