会社生活を終えて自宅にいる時間が増えると、食事や家事の分担をはじめ、日々の暮らしの至るところに予期せぬ変化が訪れます。仕事を離れて肩の荷を下ろした側と、それまでの生活習慣を守りたい側との間で、意識の食い違いが生まれるのは珍しいことではありません。本記事では、FP事務所MoneySmith代表の吉野裕一氏が、仲野隆さん(仮名)の事例とともに老後のライフプランについて考えます。※本記事に掲載している相談事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したものです。
65歳・リタイア翌日、目覚ましを鳴らさず起床。気ままな老後に喜びを噛みしめた夫、1階のリビングに降りると…妻が背中を向けたまま返した「一言」に絶句【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

夫の行動による夫婦関係の変化

現役時代の隆さんは、平日は仕事に追われ、週末も無趣味のまま自宅でのんびり過ごすのが常でした。外出する機会といえば、子どもたちが小さかったころの用事や、尚子さんの買い物に付き添う程度。近所付き合いも、すれ違ったときに軽く会釈を交わすくらいに限られていました。

 

隆さんから相談を受けたFPは、キャッシュ・フローを考えて、将来、安心できるプランニングを行いました。そのなかには、お金だけではなく、夢や希望の実現に向けた計画も含まれます。今回の相談のように、老後資金に不安がないという人であっても、老後の生きがいについても考えておく必要があります。

 

アドバイスを受けた隆さんは、昼間の空いた時間に、趣味を見つけるために、外出をするようにして、他人との交流を増やしていきました。また、尚子さんとの関係も、ただ家にいるだけではなく、尚子さんが出かけているあいだに、部屋の掃除をしたり、自分の分だけではなく、夫婦2人分の夜ご飯の準備などもしたりするように。

 

料理については、いまの時代はスマホやタブレットでレシピを検索して、簡単にできるかもしれません。しかし隆さんは、あえて尚子さんに調理方法などのアドバイスももらうようにして、会話を増やしていき、最近では少しずつ笑顔で話ができるようになっています。週末は、たまに夫婦でドライブに出かけ、今後は、年に1~2回は国内旅行も企画しているとのことです。

 

定年退職は、夫にとっては「長年の重責から解放される日」ですが、専業主婦やパート勤めを続けてきた妻にとっては「これまでの生活リズムが崩される日」にもなり得ます。お金の準備が万全であっても、双方が相手に依存しすぎたり、逆に突き放したりしてしまっては、穏やかな時間は訪れません。

 

便利な世の中になった現代だからこそ、自分の都合ではなく、相手への思いやりを行動で示すことが大切です。長年家族を支え合ってきた夫婦が、お互いに心地よい距離感を保ちながら穏やかな時間を過ごせるよう、元気なうちから「お金以外のセカンドライフ設計」にも目を向けてみてはいかがでしょうか。

 

〈参考〉

総務省統計局:家計調査年報(家計収支編)2025年(令和7年)

https://www.stat.go.jp/data/kakei/2025np/index.html

厚生労働省:令和7年人口動態統計月報年計(概数)の概況

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai25/index.html

 

 

吉野 裕一

FP事務所MoneySmith

代表