老後設計の基準となり得る「ねんきん定期便」。しかし、そこに書かれた見込み額をそのまま信じてリタイアを決めてしまうと、数年後に思わぬ壁にぶつかるかもしれません。本記事では、FP事務所MoneySmith代表の吉野裕一氏が、佐藤健司さん(仮名)の事例とともに公的年金の注意点について解説します。※個人の特定を避けるため、事例の一部を改変しています。
「ねんきん定期便の金額より多くもらえた!」年金月16万円の65歳元サラリーマン、日本年金機構からの〈年金決定通知書〉に喜びも束の間…〈同封のハガキ〉に我が目を疑ったワケ【FPの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

貯蓄1,500万円・住宅ローンなし、60歳定年で見据えた「無理のない老後」

65歳を迎えた佐藤健司さん(仮名)は、現在、63歳の妻・智美さん(仮名)と二人で穏やかな日々を送っています。30歳と28歳の二人の子どもはすでに独立し、それぞれの人生を歩んでいました。

 

佐藤さんは大学卒業後、中堅企業に38年間勤め上げ、60歳で定年退職の節目を迎えました。会社からは雇用延長の選択肢も提示されていましたが、佐藤さんはあえてそれを選びませんでした。というのも、手元には退職金を含めて1,500万円の貯蓄があり、住宅ローンもすでに完済していたからです。

 

なにより大きな安心材料となったのが、59歳のときに届いた封書の「ねんきん定期便」でした。そこに記載されていた年金見込み額は月額15万円。「妻の老齢年金と合わせると月22万円くらいになるのか。贅沢をしなければ無理なく暮らせそうだ」と佐藤さんは考えました。

 

こうして60歳で退職した佐藤さんは、完全なリタイアではなく、生活水準を維持しつつ適度に身体を動かすため、週5日のアルバイトを開始します。月18万円の給与を得ながら、65歳からの本格的な年金生活に向けて地盤を整えていきました。

65歳を前に届いた通知書…「額面アップ」の喜びを打ち砕いたハガキの正体

65歳まであと3ヵ月というころ、日本年金機構から「年金請求書」が届きます。佐藤さんは必要事項を記入して提出しました。通常、この請求書を提出してから1~2ヵ月ほどで、「年金証書」と「年金決定通知書」が届き、その後、実際の年金の支給額を知らせる「年金振込通知書(年金支払通知書または年金送金通知書)」が送られてきます。

 

年金振込通知書が届いてから、初めて支給されるまでにはさらに1~2ヵ月ほど掛かり、基本的には偶数月の15日に支払われますが、初回は奇数月になることもあります。