(※写真はイメージです/PIXTA)
20年後、30年後の自分と重なって見えた父の姿
遠藤徹さん(44歳・会社員)は、首都圏の分譲マンションで妻(40歳・会社員)と中学生の長女(13歳)との3人暮らしです。実家は、電車で2時間ほどの場所にあります。数年前に母親を亡くしたあと父親(76歳)が一人で暮らしていました。ある日、その父親が自宅で転倒して入院し、退院後に要介護1の認定を受けました。父親の入院により、遠藤さんの毎日には、これまでになかった予定や悩みが加わります。
遠藤さんには、姉(47歳)と弟(41歳)がいますが、関西圏で暮らしているので、頼ることはできなかったそうです。入院中から退院後にかけて、遠藤さんは慣れない手続きに追われました。要介護認定の申請、ケアマネジャーとの面談、デイサービスの見学。平日は仕事があるため、休みの調整にも頭を悩ませました。
退院した父親は、一人暮らしの自宅で、これまで当たり前にできていたことに戸惑うようになっていました。足腰が弱り、浴室での入浴や、通院のための外出が思うようにいきません。母親が亡くなってからは食事の支度も億劫になり、食事が簡単なものに偏りがちです。薬の飲み忘れも増え、「迷惑をかけたくない」と口にしながらも、一人きりの夜には不安が募る様子でした。
「父のようになる日が、いつか自分にも来るかもしれない。そのとき、妻や娘に負担をかけずに済むよう、元気なうちに備えを整えておきたい」。遠藤さんは、そう考えるようになりました。
そんななか、遠藤さんはふと、自分の保険証券を広げてみたそうです。加入していたのは、死亡保険金5,000万円の定期保険と、医療保険。遠藤さん夫婦の世帯年収は1,000万円で、貯蓄は1,200万円あります。「家族への保障は十分」と思っていました。ところが、介護が長引いたときの備えや、認知症で自分が手続きできなくなったときの備えは、どこにもありません。「父の姿は、20年後、30年後の自分かもしれない」と遠藤さんは感じたといいます。
具体的な介護への備え方
保険見直しの第一歩は、公的制度でまかなえる範囲を知ることです。公的介護保険では、認定を受けると原則1〜3割の自己負担でサービスを利用できます。ただし、現金ではなくサービスの形で給付され、要介護度ごとの支給限度額を超えた分は全額自己負担です。
1ヵ月の自己負担(1〜3割)の合計が所得などに応じた上限額を超えた場合には、申請により超えた分が戻る「高額介護サービス費」の仕組みもあります。なお、福祉用具の購入費、住宅改修費、施設サービスの食費や居住費などは対象外です。
仕事との両立では、一定の条件を満たせば、介護休業を取得でき、雇用保険から介護休業給付金(休業前賃金の約67%)が支給されます。対象家族1人につき通算93日まで、最大3回にわけて取得できます。
遠藤さんのように、40代から備えを考える際のポイントがあります。介護保険料は40歳から負担しますが、64歳までのあいだにサービスを利用できるのは、加齢に伴う特定の病気(特定疾病)が原因で認定を受けた場合に限られるのです。65歳以上になると、原因を問わず、認定を受ければ利用できます。
そのうえで足りない部分を民間の保険で補うのが、整理しやすい順序です。民間の介護保険は、支払い条件が商品ごとに異なります。公的介護保険の要介護度に連動するものや、保険会社独自の基準で判断するものなどがあり、同じ連動型でも、どの要介護度から給付されるかは商品によって違います。どの状態でいくら、一時金か年金かを、契約前に確かめておきましょう。
ただし、民間の保険が支えられるのは、主に費用の面です。介護には、費用のほかにも、手続きの手間や気持ちの負担、判断が難しくなったときの備えなど、さまざまな課題があります。住まいの地域の地域包括支援センターは、高齢者や家族の総合的な相談窓口です。保険による備えとあわせて、こうした窓口も心強い味方になります。