有利子の奨学金を利用する返済者にとって、昨今の金利上昇は総返済額を左右する重大な局面を迎えている。固定方式の上限到達や見直し方式の利率上昇が進むなか、「一刻も早く繰上げ返済をして利息を削るべきか、それとも将来の出費に備えて手元資金を残すべきか」という判断に悩む人も少ない。制度をどう活用し、家計の変化と折り合いをつけるべきなのか。15年におよぶ返済を経験した当事者のリアルな教訓とともに、金利上昇時代における向き合い方を探る。※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したものです。
晩婚夫婦、40歳を過ぎてから授かり、「なんとかなる」と思ったが…〈500万円の奨学金〉を背負わせた33歳息子の現在 (※写真はイメージです/PIXTA)

転職、そして年60万円の繰上げ返済

28歳のとき、Aさんは外資系メーカーの日本法人に経理として転職した。編集職からの異業種転職だったが、大学で学んだことや、出版社で数字を扱っていた経験が接点となった。

 

収入は大きく変わった。月々の給与が上がり、賞与も支給されるようになった。Aさんは収入が増えたタイミングで、賞与の一部を繰上げ返済に充てることに。年間の返済額を60万円に増やし、完済を目指して計画的に返済を進めていった。

 

「第二種は有利子なので、金利がかかる分、早く返したほうがいいという計算もありました。収入が上がったタイミングでまとめて返すのが、一番効率がいいと思って」

 

数年にわたって繰上げ返済を続け、残債はわずかになった。ようやく完済が見えてくる。

 

「借りてから15年近くかかりました。やっと終わるのか、という感じです」

 

返済時の孤独

両親はすでに他界、Aさんは一人になった。奨学金についてこれまで打ち明けたのは、親しい友人一人だけだという。

 

「お金のことなので、自分からはいわないですね。その友人にはいいましたけど、『大変だけど、ちゃんとしてるね』といわれました。悪い意味ではないとわかっています。ただ、返しているのが偉いみたいな話になるのも、少し違う気がして」

 

繰上げ返済に充てている数十万円は、別の使い方もできた金額だ。

 

「返済に回す分、友人と食事に行ったり、なにかを一緒に楽しんだりする機会も限られてくる。自分のために使うお金が減るというより、人とのつながりに使えるお金が減る。そこは実感としてありますね」

返済に15年、現在33歳…完済を前に思うこと

「奨学金という名前が、ソフトすぎたんです」

 

Aさんはそう振り返る。学びを支援する、前向きで柔らかな響きのある言葉。しかし、Aさんが利用した有利子の第二種奨学金は、卒業後も長年にわたって返済が続くものだった。

 

実際、「奨学金」という言葉には、学びを支援する制度というイメージがある。返済不要の給付型もあるため、言葉そのものが間違っているわけではない。一方、貸与型、とりわけ有利子の奨学金は、卒業後の生活にも影響し続ける。Aさんにとって、約500万円の借入は、返済を続けるなかで人との付き合いや日々のお金の使い方にも関わるものだった。

 

これまでの取材でも、「もらえるお金だと思っていた」という声を複数聞いてきた。制度の名称を変えることは簡単ではない。それでも、貸与型については、返済が必要であることに加え、返済期間や総返済額、利率によって負担が変わることまで、具体的に理解できることが大切だ。

 

そして、返済は始まってからも続いていく。長期金利の上昇を背景に、貸与型奨学金の利率も上がっている。借入額だけでなく、適用される利率や返済計画をどう考えるか。Aさんの15年にわたる経験は、奨学金を借りるときだけでなく、返し続けるなかでお金とどう向き合うかという問いも投げかけている。