有利子の奨学金を利用する返済者にとって、昨今の金利上昇は総返済額を左右する重大な局面を迎えている。固定方式の上限到達や見直し方式の利率上昇が進むなか、「一刻も早く繰上げ返済をして利息を削るべきか、それとも将来の出費に備えて手元資金を残すべきか」という判断に悩む人も少ない。制度をどう活用し、家計の変化と折り合いをつけるべきなのか。15年におよぶ返済を経験した当事者のリアルな教訓とともに、金利上昇時代における向き合い方を探る。※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したものです。
晩婚夫婦、40歳を過ぎてから授かり、「なんとかなる」と思ったが…〈500万円の奨学金〉を背負わせた33歳息子の現在 (※写真はイメージです/PIXTA)

金利が上がる時代、返済計画をどう考えるか

Aさんが繰上げ返済を進めた理由のひとつは、有利子であることだった。収入が上がったタイミングで返済を前倒しすれば、利子の負担を抑えられると考えたのだ。

 

そしていま、奨学金の利率にも変化が表れている。日本学生支援機構(JASSO)が2026年10月1日に公表した「令和8年度貸与利率一覧」(※)によると、2026年9月に貸与を終了した人に適用される第二種奨学金の利率は、基本月額で利率固定方式が年3.000%、利率見直し方式が年2.400%となった。固定方式の利率は、制度上の上限である年3.0%に達している。

 

ただし、これは2026年9月に貸与を終了した人の利率であり、すでに返済している人全員の利率が一律に上がるわけではない。第二種奨学金には、貸与終了時に決まった利率が返還完了まで適用される「利率固定方式」と、おおむね5年ごとに利率が見直される「利率見直し方式」がある。金利上昇の影響は、選択している方式や適用される利率によって異なる。

 

こうした環境だからこそ、自分の適用利率や残高、今後の返済見通しを把握しておくことが大切だ。一方で、繰上げ返済を急ぐあまり手元資金を減らしすぎれば、急な出費や将来の生活に備える余裕が小さくなる。早く返すことだけを正解とせず、利子の負担と手元資金のバランスを考えながら判断したい。

 

Aさんは、収入が増えたことで繰上げ返済に踏み切ることができた。返済猶予が必要な時期もあれば、余裕ができて返済を前倒しできる時期もある。長い返済期間のなかで、暮らしも収入も変わっていく。

 

Aさんは「これから借りる人たちに伝えたいことがある」と話していた。

 

借りる前に返済の見通しを具体的に知ること。そして返済中も、金利や家計の変化に応じて、自分に合った返済計画を考えられること。――金利が動く時代だからこそ、奨学金は借りるときだけでなく、返しているあいだも必要な情報を得ながら向き合っていくことが大切なのではないだろうか。

 

〈参考〉

※ 日本学生支援機構「貸与利率の推移」(令和8年度貸与利率一覧、閲覧日:2026年10月9日)

https://www.jasso.go.jp/shogakukin/about/taiyo/taiyo_2shu/riritsu/2007ikou.html

 

 

大野 順也

アクティブアンドカンパニー 代表取締役社長

奨学金バンク創設者

 

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