定年を迎えれば、仕事から解放される。そう考える人は少なくありません。一方で、経済的には働く必要がなくても、再び仕事を始める人もいます。その背景にあるものとは――ある男性の事例から、高齢期の働き方について考えます。
「もう働かなくていいだろ」〈貯蓄3,200万円〉〈年金月18万円〉65歳男性、会社を去ってわずか半年〈時給1,450円のアルバイト〉を始めた理由 ※写真はイメージです/PIXTA

65歳男性、再び働きだした理由

内閣府『令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査』によると、今後優先的にお金を使いたいものとして「子や孫のための支出」を挙げた人は25.8%。一方、自分や配偶者の医療・介護費用を優先したい人は47.5%。子や孫への支出を大切にしながらも、自分たちの将来に備える必要性を意識している人も少なくありません。

 

完全リタイアから半年ほど過ぎたころ、田中さんの姿は駅前のコンビニエンスストアにありました。

 

「アルバイトを始めました。週1日、1日5時間程度で、時給は1,450円。月に3万円ほどになる計算です。金額としては大きくありません。でも、自分で働いて得たお金なので、気持ちよく孫のために使えます」

 

結構覚えることも多く大変だと話す田中さん。それでも日々にメリハリができて楽しいと笑います。月3万円ほどの収入の一部は孫への支出に。余れば貯蓄に回します。

 

「孫が大きくなって、もう援助が必要なくなったら辞めるかもしれません。しかし結構動くので、健康にもいい。ジムに通えばお金は出ていきますが、ここなら稼ぐことができる。一石二鳥です」

 

内閣府『高齢社会白書』によると、65〜69歳の就業率は54.5%と半数を超え、65歳以上の就業者数は22年連続で増加しています。また、65歳以上の人が働く理由として「収入(48.2%)」のほか、「体に良い・老化防止(25.1%)」や「仕事が活力になる(12.6%)」などが挙がっています。

 

高齢期の就労は生活費の補填にとどまらず、健康維持や生活の張り合い、社会関与を得る有効な手段です。一定の資産や年金があっても、孫への支出や健康作りなど目的を持って心地よく働くことは、人生100年時代における豊かな老後設計の選択肢のひとつといえそうです。