「親の生活が苦しいなら、子どもが支えなければ」と、仕送りを続ける人は少なくありません。そのようななか「もう仕送りはいらない」という親には、どのような事情があるのでしょうか。ある親子の事例から、高齢期における親子のお金のやり取りについて考えます。
「もうお金は送らなくていい」年金月12万円・74歳父が突然「月4万円の仕送り」を拒否。46歳娘「無理しないで」と心配するも電話では埒が明かず…実家に乗り込んだ結果 ※写真はイメージです/PIXTA

「もうお金は送らなくていい」父の突然の一言

「今月から、もうお金は送らなくていい」

 

東京都内で暮らす46歳の会社員、高橋智子さん(仮名)は、父・茂さん(74歳・仮名)から電話でそう言われました。

 

智子さんは5年間、毎月4万円を父に送っていました。茂さんの年金は月12万円ほど。持ち家で暮らしているものの、74歳という年齢を考えれば、医療費や住宅の修繕費など、まとまった支出も心配です。

 

「最近は何でも高くなったな」

 

そんな茂さんの一言が始まりでした。

 

厚生労働省『2025(令和7)年 国民生活基礎調査』によると、高齢者世帯の52.1%が生活意識について「苦しい」(大変苦しい・やや苦しい)と回答しています。また、公的年金を受給する高齢者世帯のうち、所得の100%を年金に頼っている世帯は41.3%に上ります。相次ぐ物脈高の中で年金収入のみで生活費や突発的な医療費などを賄うのは決して容易ではありません。

 

4万円あれば、少しは楽になるだろう――そんな気持ちで、仕送りを続けてきたといいます。だからこそ、「もう送らなくていい」と言われたことが腑に落ちません。毎日のように値上げのニュースを聞くのに――。

 

「生活、大丈夫なの?」

「大丈夫だよ」

「年金だけで足りてるの?」

「心配しなくていい。無理なんてしてないから」

 

何度聞いても、父はそれ以上の話をしません。智子さんは、父が自分に心配をかけまいとしているのだと思いました。父は「本当に大丈夫」と繰り返すばかり。電話では埒が明きません。

 

そこで智子さんは、週末に実家へ向かうことにしました。父にはそのことは伝えませんでした。ちょっとしたサプライズ、と思って。