※写真はイメージです/PIXTA
65歳男性、もう働く必要はないと完全リタイア
「これで、もう働かなくていいだろ」
そう話していたのは、東京都内に住む田中哲也さん(65歳・仮名)。大手メーカーに38年間勤め、60歳で定年。再雇用で働き続け、65歳の誕生日を前に会社を去りました。退職金とこれまでの貯蓄を合わせた金融資産は約3,200万円。妻と2人で暮らし、月18万円ほどの年金受給も始まりました。
住宅ローンはすでに完済し、大きな負債はなし。子ども2人も独立しています。
「贅沢をしなければ、生活には困らないと思っていました。だから、定年後は仕事をしないつもりでした」
退職直後は、予定どおりの生活でした。朝は目覚ましをかけずに起きる。平日に混雑した電車へ乗る必要もありません。妻と買い物に出かけたり、近所を散歩したりする時間も増えました。
ところが、3ヵ月ほど経ったころから、「このような生活でいいのか――」と思う機会が多くなったといいます。
「40年以上、仕事、仕事、仕事だったので、やることがなくて暇なんです。毎日遊んで暮らすほど、裕福でもありませんし」
そんなとき、田中さんは小学生になった孫の話を聞きました。
「来年から、習い事をもう一つ増やしたいんだって」
娘がそう話したあと、少し間を置いて続けました。
「向こうのお父さんが出してくれるみたいだから、私としてはいいかなと思ってる」
娘の夫の両親から、孫の習い事や学校関連の費用について援助があることを、田中さんはそのとき初めて知りました。もちろん、娘夫婦が自分たちに援助を求めているわけではありません。
「うちも、何かしてあげたほうがいいんじゃないか。向こうにばかり負担をかけるわけにもいかない」
妻はすぐに答えました。
「でも、私たちにそんな余裕ある?」
その言葉に、田中さんも反論できませんでした。
3,200万円の金融資産があっても、毎月の年金だけで一生安心できるとは限りません。医療や介護、住宅の修繕など、これからまとまった支出が発生する可能性もあります。3,200万円あれば大丈夫、とは言い切れないでしょう。
「孫に何かしてあげたい……でも、そのために自分たちが我慢したり、生活費を削ったりするのも違いますよね」