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はじめは月2万円の援助だったが…
48歳の田中剛さん(仮名)は、東京都内の会社に勤めています。妻と2人で暮らし、子どもは独立しています。年収は約600万円。貯蓄は1,200万円ほどありました。
60歳を目前にして、剛さんが気にしていたのは自分たちの老後。住宅ローンは残りわずかになりましたが、定年後の収入がどうなるかは分かりません。再雇用で働き続けるつもりですが、当然、現役時代と同じ収入を得られるわけではありません。
そんな剛さんには、73歳の母・恵子さん(仮名)がいます。父親はすでに亡くなり、現在は母が一人で暮らしています。
年金は月約10万円。もともと恵子さんは、年金の範囲で生活していました。しかし、数年前から家計に変化が出てきました。食料品や光熱費などの支出が増え、通院にかかる費用も以前より増えています。さらに、ボイラーが壊れ、40万円ほどの突発的な出費が発生。家計はますます不安定になりました。
母から相談を受けた剛さんは、毎月2万円を送ることにしました。
「足りないときは言って」
この言葉がきっかけでした。数カ月後、恵子さんから「もう少し助けてもらえないか」と頼まれます。剛さんは仕送りを4万円に増やしました。母親に困ってほしくない。そう考えたからです。
しかし、仕送りを始めて1年ほど経ったころ、剛さんの家計にも変化が出てきました。定年まで残り2年。妻からは「老後のお金、大丈夫かしら……」と聞かれるようになりました。
剛さん自身も、預金通帳を見るたびに考えるようになります。毎月4万円なら年間48万円。5年間続けば240万円です。母親の生活を支えるためのお金ですが、その分だけ自分たちの老後資金は着実に減っていきます。
厚生労働省『2025(令和7)年 国民生活基礎調査』によると、65歳以上で「前年より貯蓄が減った」と答えた世帯は41.3%に上り、その減額理由の80.8%を「日常の生活費への支出」が占めています。物価高や医療費・光熱費などの負担増が響き、年金や貯蓄だけでは日々の暮らしを維持しきれず、家計の限界を感じる高齢世帯は少なくありません。
一方で、親を支える子世代にも住宅費や教育費、老後資金などの支出があります。親の生活が苦しいからといって、子が際限なく補填できるとは限りません。
剛さんも、母親を助けること自体をやめたいわけではありませんでした。ただ、「いつまで、いくら支援するのか」が決まっているわけではない。もしかしたら母の寿命が尽きるまで……そう考えると、気が遠くなりそうでした。
そんなある日のことです。恵子さんから電話がかかってきました。
「来月から、あと1万円お願いできない?」