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「卒業だけど、就職しない」47歳の父が聞かされた長男の決断
「卒業だけど、就職しない」
47歳の会社員、高橋直樹さん(仮名)が長男からそう告げられたのは、夏前の夕食後だったといいます。
長男の蓮さん(22歳・仮名)は、都内の有名私立大学に通う4年生(当時)。就職実績の高い大学であり、蓮さんも順調に就職活動を進めていると思っていました。
ところが、就職活動について尋ねた直樹さんに返ってきたのは、予想していなかった答えでした。
「俺、会社には入らない。やりたいことがあるから」
直樹さんは、すぐには言葉が出ませんでした。
月収は49万円ほど。妻と長男、次男の4人家族です。住宅ローンも残っています。長男の大学進学に合わせて、それまで以上に教育費を意識して家計をやりくりしてきました。
「大学まで行かせたのだから、普通に卒業して、普通に就職するのが当たり前だと思っていたので……正直『あんなに金を払わせておいて、ふざけるな』と怒鳴りそうになりました」
しかし、蓮さんには以前から続けてきた活動がありました。
大学入学後から、映像制作を独学で学び、企業や個人から小さな案件を受けてきたのです。収入はまだ安定していません。それでも、本人は「卒業後は映像制作で食べていきたい」と考えていました。
しかも、すでに卒業後の仕事の依頼もいくつか入っているといいます。
直樹さんが気になったのは、「夢がある」という言葉だけではありませんでした。
「それで、生活はどうするんだ」
そう聞くと、蓮さんはアルバイトを続けながら仕事を増やし、1年ほどで事業として軌道に乗せたいと話しました。
ただ、父親には別の心配がありました。
「失敗したらどうするんだ」
蓮さんは「そのときは就職する」と答えました。
大学卒業後、すぐに会社へ入らない。親世代からすれば、大きな決断です。
実際、大学卒業後に就職する若者は圧倒的に多い状況です。厚生労働省と文部科学省による調査では、2026年3月卒の大学生の就職率は98.0%でした。これは「就職希望者」に占める就職者の割合ですが、大学卒業後に就職することが一般的な進路であることに変わりはありません。
子どもが大学卒業後に何をするかまで、親が決められるわけではない――直樹さんも、それくらいはわかっています。問題は、本人の意思を尊重することと、親が経済的な負担を引き受け続けることは別だという点です。
直樹さんは、そこを長男に確認しました。
「生活費は自分で出すのか」
蓮さんは、一人暮らしはせず、当面は実家で暮らしたいと答えました。その瞬間、直樹さんは考え込んだといいます。蓮さんが就職しなければ、親としては生活面を支える期間が延びる可能性があるからです。