※写真はイメージです/PIXTA
妻が「家族のためって、誰が決めたの?」 と言ったワケ
恵さんは、哲也さんの仕事を否定したかったわけではありません。年収950万円を稼ぎ、住宅ローンを払い、娘の大学費用も負担してくれている。そのことは十分に分かっています。
ただ、最近の哲也さんは、家族との時間まで削るようになっていました。土日のどちらかに仕事が入るのは珍しくありません。夕食中に会社から電話が来れば席を立つ。家族で出かける予定を立てても、「仕事が入るかもしれない」と直前まで予定を決められない。娘が大学の話をしても、「今ちょっと忙しい」と後回しにする――。
恵さんが言いました。
「家族のために働いてくれてるのは分かってる。でも、家族を犠牲にするのは違うし、一人で抱え込む必要はないんじゃないかな」
哲也さんは布団の中で、日曜日のことを思い返していました。朝から仕事をして、夜までパソコンを開いていた。
その間、妻も娘も家にいた。それなのに、自分には「家族と過ごした」という感覚がありませんでした。
「俺、何のためにあんなに働いてたんだろうな」
哲也さんがそう言うと、恵さんは「それを今から考えればいいんじゃない」と答えました。
午前8時、哲也さんは会社に電話を入れました。
「今日は休ませてください」
上司に詳しい事情は話しませんでした。その日は仕事から離れました。
厚生労働省『令和7年版過労死等防止対策白書』によると、令和6年度における精神障害の労災支給決定件数は1,055件に達し、近年増加傾向が続いています。発病の要因となった出来事(心理的負荷)では「対人関係」のほか、「仕事の量・質」や「仕事の失敗、過重な責任の発生」などが挙げられています。
高橋さんのように中間管理職として責任や業務を一人で抱え込んで限界を迎える前に、職場全体でのサポート体制の整備やメンタルヘルス対策を推進すること、そして家族とも対話し持続可能な働き方を模索することが求められています。