老後のために、できるだけお金を残しておきたい――そう考える高齢者は少なくありません。一方で、子どもから見れば「そんなに貯め込んで、何に使うの?」と疑問に感じることもあります。ある母娘の事例から、お金を使わない高齢者の事情と、老後のお金との向き合い方を考えます。
3冊の預金通帳に刻まれた「貯金額」に52歳娘が絶句。〈年金月12万円〉78歳母がひた隠しにしていた秘密に「うっ、うそでしょ?」 ※写真はイメージです/PIXTA

3冊の通帳を見て、52歳の娘が絶句した理由

「お母さん、これ……全部、お母さんのお金なの?」

 

実家を訪ねた52歳の山田陽子さん(仮名)は、母・山田和子さん(78歳・仮名)の引き出しから3冊の預金通帳を見つけました。

 

和子さんは、月12万円ほどの年金で一人暮らしをしています。陽子さんは以前から、母の生活費を心配していました。食費や光熱費、病院代を考えれば、年金だけでは余裕がないと思っていたからです。

 

ところが、通帳に記された残高を見て、陽子さんは言葉を失いました。

 

「うっ、うそでしょ?」

 

3冊を合わせると、貯金は2,000万円を超えていたのです。

 

陽子さんにとって、母は「年金だけで何とか暮らしている人」でした。服は10年前に買ったものを着ています。外食もしません。旅行に行ったという話も聞いたことがありません。

 

だからこそ、これほどの預金があることが意外だったのです。和子さんは、娘の問いかけにすぐには答えませんでした。

 

「使う予定があるから、取っておいたのよ」

 

総務省『家計調査 貯蓄・負債編(2025年平均)』によると、二人以上の世帯のうち世帯主が60歳以上の世帯の貯蓄現在高は2,611万円となっています。年代別に見ても、世帯主が65歳以上の世帯で2,564万円、70歳以上の世帯で2,471万円と、いずれも2,000万円を超える水準です。このように高齢世帯がまとまった貯蓄を抱えていること自体は珍しくありません。

 

ただ、陽子さんが気になったのは金額だけではありませんでした。母は、なぜこれほどまでにお金を使わなかったのか。そして、なぜ自分に何も話してくれなかったのか。

 

「私が心配していたの、知ってたでしょう?」

 

そう聞くと、和子さんは少し考えてから答えました。

 

「知ってたよ。でも、言ったら陽子が心配するでしょう」