(※写真はイメージです/PIXTA)
7年後の不測の事態
「終の棲家」で暮らしはじめてから7年後、妻が脳梗塞で倒れ、下半身麻痺になってしまいました。Aさんは自宅を車いす生活に対応できるよう改装し、2階にあった夫婦の寝室を1階へと移します。
その結果、2階へ上がることがほとんどなくなり、夫婦の寝室は物置部屋と化してしまいました。
妻が手入れをしていた庭も荒れ放題となります。1階のリビングから庭の花を眺めたり、ときにはこの庭でバーベキューを楽しんだりすることもありましたが、日々の妻の介護に追われるAさんは、そうした時間や心のゆとりを失っていきました。
そして介護が始まって2年後、妻は74歳でこの世を去ります。妻のために用意したはずの終の棲家には、1人残されたAさんの姿がありました。「人の寿命はわからないものだが、私の選択は間違っていたのだろうか……。マイホームを買ったことが本当によかったのか、わからなくなってしまった」と、Aさんは静かに思い悩みます。
妻が亡くなってから、次々大きな出費が
マイホームは新築後、10年は税金の負担ぐらいで、大きな動きはないかもしれません。10年を過ぎると、防水シートの張替えやシロアリ対策が必要になるなど、メンテナンス費用が発生します。さらに、給湯器や食洗器などの設備、家電製品の買い替えも、同じようなタイミングで毎年のように増えてきます。年金だけで日常生活は賄えたとしても、10万円を超えるような大きな支出は、貯蓄を切り崩すことも必要になってくるでしょう。
妻に先立たれたAさんには、すでに独立して家庭を持つ一人娘がいます。心配して連絡をくれる娘に対し、Aさんは自分の家庭のやりくりで大変な娘を気遣い、「大丈夫だ」と返信を続けていました。
Aさんは、まさか自分が1人残されるとは想定していなかったため、手入れの必要な庭や使わない2階がある戸建ては、持て余すだけの負担となってしまったのです。近所の不動産業者に相談したものの、「駅から少し離れたところであるため、すぐに売れるかわからない」といわれてしまいます。
老後において、「家賃の心配がない持ち家」は大きな安心感をもたらすように思えます。しかし実際には、維持補修費や設備の買い替えなど、所有し続ける限り費用が発生し続けるのが現実です。
特に高齢期は、配偶者との死別や自身の健康状態の悪化など、予期せぬライフスタイルの変化が起こりやすくなります。マイホームという現金化しにくい資産に資金を集中させてしまうと、いざというときに臨機応変な対応が難しくなる点に注意しましょう。
老後の住まいを選ぶ際は、目先の安心感だけでなく、将来の介護リスクや将来的な売却・賃貸のしやすさも含めて、多様な選択肢から慎重に検討することが求められます。
三藤 桂子
合同会社ミコサポ
代表
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