※写真はイメージです/PIXTA
初孫の七五三に義両親が「大フィーバー」
アキさんは、会社員の夫・ユウタさん(45歳・仮名)と、小学生の長女、5歳の長男との4人暮らしです。ユウタさんの両親はともに70代。特に義母は孫をとてもかわいがっており、数年前、初孫である長女の七五三を迎えたときには、何ヵ月も前から楽しみにしていました。
「写真館はここがいいんじゃない?」「着物はレンタルより買ったほうが記念になるわよ」「せっかくなんだから、食事もちゃんとしたところにしましょう」
義母は次々に提案し、写真撮影代や着物代、食事代なども「私たちがお祝いするから」とかなりの部分を負担してくれました。
当日も義両親は大張り切り。神社では何度も孫を呼び止めて写真を撮り、写真館でも「今度はおじいちゃんと」「次はおばあちゃんと」と撮影。長女も祖父母にかわいがられてうれしそうでした。アキさん自身も当初は、「ここまで喜んでもらえるなんてありがたい」と感じていたそうです。
ところが、帰宅後に写真を見返して、あることに気づきました。自分の母親と娘が一緒に写った写真が、ほとんどなかったのです。
シングルマザーの母は、ずっと一歩引いていた
アキさんの母・ヨウコさん(68歳・仮名)は、アキさんが小学生のころに離婚。それから長年、シングルマザーとして1人で娘を育ててきました。七五三にも参加していましたが、義両親とは対照的に、当日はほとんど前に出ることがありませんでした。
「私はいいから、お義父さんとお義母さんを撮ってあげて」「せっかく買っていただいた着物なんだから、そちらのおばあちゃんと撮ったら?」
そう言って、少し離れたところから孫を眺めていたといいます。義母に悪気があったわけではありません。ただ、アキさんには以前から気になっていた発言がありました。
ヨウコさんが孫の誕生日にちょっとしたプレゼントを持ってくれば、「なんだか地味ね。せっかくのお祝いなのに」。親族で食事をするときにも、「お母さまって、あまりこういうことにお金をかけない方なのね」。そんな言葉を口にすることがあったのです。ヨウコさんは、そのたびに笑って受け流していました。
長女の七五三でも、義両親が写真撮影や着物、食事などにまとまった金額を出す一方、ヨウコさんはお祝いを包んで参加しました。
後日、アキさんが「もっと一緒に写真を撮ればよかったね」と言うと、母はこう答えました。
「私はいいのよ。向こうのお父さんとお母さんがあれだけしてくれたんだから。みんなが楽しそうだったし」
責めるような言い方ではありませんでした。だからこそ、アキさんにはその言葉が残りました。
「母は遠慮していたんだと思います。お金をたくさん出していない自分は前に出ちゃいけない、みたいに。でも、私を1人で育ててくれた母なのに、私はその場で何も気づいてあげられなかった。それがずっと引っかかっていました」
「今度の七五三、どこの写真館にする?」
それから数年が経ち、今度は長男が5歳の七五三を迎えることになりました。すると夏ごろから、義母から連絡が来るようになりました。
「今度の七五三、どこの写真館にする?」「男の子だから袴よね。見に行かない?」「食事のお店も早めに決めないと」
義母にとっては、当然、今回も両家そろって祝うものだと思っていたのでしょう。しかしアキさんは、すでにユウタさんと話し合っていました。今回は家族4人と、自分の母だけで静かに祝いたい、と。
ユウタさんも最初は驚きました。「うちの親、すごく楽しみにしてると思うけど」
それでも、前回の七五三でヨウコさんがほとんど写真に写っていなかったことや、アキさんがそのことを何年も気にしていたことを聞き、「今回はそうしようか」と了承しました。
アキさんは意を決して義母に伝えました。
「今回は申し訳ないんですけど、遠慮していただこうと思っているんです」
電話の向こうで、義母はしばらく黙っていました。
「どうして? 前はみんなでやったじゃない」
アキさんが「今回は母にもゆっくり孫と過ごしてもらいたくて」と説明すると、義母はこう言いました。
「お金のことなら出すわよ。写真代でも着物代でも。そんなこと気にしなくていいのよ」
その言葉を聞いた瞬間、アキさんは「やっぱり伝わっていなかったんだ」と感じたといいます。
「そういうことじゃないんです」
そして初めて、数年前から抱えていた思いを義母に伝えました。
「前の七五三で、母はほとんど孫と写真を撮れなかったんです。お義母さんたちが悪いと言いたいわけじゃありません。でも母はずっと遠慮していました。私はそれに気づかなかったことを、今でも後悔しています。もちろん、お義母さまが孫のためにお金を惜しみなく出していただいていることには感謝しています」
義母は驚いた様子で、「そんなふうに思っていたなんて知らなかった」と答えたそうです。