(※写真はイメージです/PIXTA)
「塾に行かなくてもいい」けれど……
一方、ミサトさんは私立高校を選んだこと自体を後悔しているわけではありません。特に助かっているのが、大学受験への手厚いサポートです。
地方では都市部ほど大手予備校や進学塾の選択肢が多くありません。アヤさんは現在、学校以外の塾には通っておらず、学校の授業や講習を中心に大学進学を目指しています。ただし、「塾に行かなくていい=受験対策にお金がかからない」わけでもありません。
アヤさんの学校では、夏休みに東京へ行き、大手予備校が実施する夏期講習を受講するプログラムもあります。参加すれば、講習に関連する費用だけでなく、地方からの交通費や宿泊費なども必要になります。ほかにも模試や教材など、大学受験に向けた支出は少しずつ発生します。
「普通に塾へ通わせるよりは助かっていると思います。でも、入学前は『塾代がかからない』という部分だけを大きく考えていました」
学校からの請求だけではなかった
もう一つ、入学して初めて実感したのが友人付き合いにかかるお金でした。
アヤさんの学校には、地元で医院を営む家庭や、地域の有力企業を経営する家庭など、比較的経済的に余裕のある家庭の生徒も少なくありません。もちろん、すべての家庭が裕福というわけではありませんし、友人たちが派手にお金を使っているわけでもありません。それでも、家庭による「お金の感覚」の違いを感じる場面はあるといいます。
休日に友人と出かければ交通費や食事代がかかります。学校帰りにカフェへ寄ったり、友人の誕生日にプレゼントを用意したりすることもあります。一つ一つは高校生の交際費として特別に高額ではなくても、回数が重なればそれなりの金額になります。
「友達と遊びに行くから7,000円ほしい、今度は誕生日だからプレゼントを買いたい、といったことが増えました。高校生なら友達付き合いも大切なので、全部ダメとは言いたくありません」
周囲に合わせるために無理をしてお金を使わせるつもりはありません。一方で、お金を理由に娘だけが友人との付き合いを諦めることばかりになるのも避けたいといいます。
「学校に払うお金ばかり考えていました。でも実際には、『その学校で3年間生活するためのお金』もあるんですよね」
授業料や制服代のように金額があらかじめ示されるものとは違い、こうした交際費は入学前には見えにくい支出でした。
私立高校の学校教育費、年間平均83万円
文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」によると、私立高校(全日制)の学校教育費は年間平均83万2,650円でした。内訳を見ると、授業料は27万9,170円ですが、それ以外にも学校納付金等が12万7,346円、通学関係費が13万6,790円、入学金等が8万290円、図書・学用品・実習材料費等が7万3,312円、修学旅行費等が6万2,778円などとなっています。
これらは全国平均であり、実際の負担額は学校や学年、通学距離、部活動などによって異なります。海外への修学旅行がある学校なら、特定の項目が平均を大きく上回ることもあるでしょう。また、高校段階の修学支援では、授業料負担を軽減する仕組みとは別に、低所得世帯を対象として授業料以外の教育費を支援する「高校生等奨学給付金」も設けられています。
いわゆる「高校無償化」によって授業料の負担が軽減されても、学校生活に必要な費用すべてが無償になるわけではありません。
「弟も私立に行きたいと言ったら?」
ある日、夫から言われた一言が、ミサトさんには引っかかりました。
「弟も私立に行きたいって言ったら、同じように出せる?」
長男は現在、中学2年生です。もし長男も姉と同じように私立高校を希望したとき、「お姉ちゃんには認めたけれど、あなたは公立にして」と簡単に言えるのだろうか。さらに、現在アヤさんは、国際系の分野を学ぶため、東京の国立大学を第一志望に受験勉強に励んでいます。進学すれば、大学の学費に加えて、家賃や食費など一人暮らしの費用も必要になります。
「私立高校に入れるときは、『高校3年間でいくらかかるか』を考えていました。でも、その先には大学がある。娘の仕送りが必要になるころには、息子も高校生です。教育費って、もっと長い目で考えないといけなかったんですよね」
高校授業料への支援が広がることで、私立高校も進学先として選びやすくなります。一方、負担が軽減されるのは教育費の一部です。入学時の費用、学校納付金、通学費、海外研修、部活動、大学受験対策に加え、数字には表れにくい日々の交際費もあります。その先の大学進学まで考えれば、家計への負担はさらに長く続きます。
高校選びでは授業料だけでなく、「その学校で3年間を過ごすためにいくら必要なのか」を把握し、その先の進学も含めて教育費を見通しておくことが重要です。
ミサトさんはいま、パートの勤務を増やしながら、2人の子どもの進学に備えています。
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