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娘夫婦のために続けた「毎週末の訪問」
「お義母さん、もう限界です」
娘婿の直樹さん(42歳・仮名)からそう言われたとき、佐藤和子さん(72歳・仮名)は、何のことなのかすぐには分かりませんでした。
和子さんは、娘の智子さん(36歳・仮名)と直樹さん、小学生の孫が暮らす家を毎週末訪ねていました。持参するのは、煮物や揚げ物、孫の好物などの手料理です。
「仕事が忙しいでしょう。これくらいなら私にもできるから」
共働きの娘夫婦を助けたいという気持ちから始めたことでした。
智子さんも当初は、「お母さん、いつもありがとう」と喜んでいました。ところが、和子さんには、もう一つ気になっていることがありました。
孫は1人。和子さんは、できればもう1人、孫が増えてほしいと思っていたのです。
「もう1人くらいいてもいいんじゃない?」
食事の席で、そんな話をするようになりました。智子さんは笑って受け流していました。
「今はこの子のことで精いっぱいだよ」
和子さんは、それで話が終わったとは思いませんでした。
「でも、きょうだいがいたほうが、この子のためにもいいでしょう」
「お母さん、私たちは今の3人でいいと思ってるから」
「まだ年齢的にも考えられるでしょう。私も手伝うから」
和子さんにすれば、娘夫婦を心配しての言葉でした。
しかし、直樹さんは次第に口数が減っていきました。家族の夕食に毎週のように同席する義母から、子どもの人数について繰り返し意見を言われる。その状況に、負担を感じるようになったのです。
内閣府『令和8年版高齢社会白書』によると、65歳以上の者がいる世帯構造は大きく変化しています。昭和55(1980)年には全体の半数(50.1%)を占めていた「三世代世帯」は、令和6(2024)年には7.0%へと激減しました。一方で、「夫婦のみの世帯」が32.7%、「単独世帯」が31.8%と、それぞれ約3割を占めるようになっています。
かつてのように親世代と子世代が同居して日常的に関わり合う形から、互いに独立した世帯で暮らすスタイルが主流となりました。家族同士の助け合いのつもりが「干渉」と受け取られてしまう背景には、こうした世帯構造の変化や家族間の距離感の違いが潜んでいます。
もちろん、親子の関係が近いこと自体が問題なのではありません。和子さんも、娘夫婦の生活に入り込みたいと考えていたわけではありませんでした。ただ、「助けてあげたい」という気持ちと、「どうするかは夫婦で決めたい」という娘夫婦の考えが、少しずつかみ合わなくなっていました。
そして、ある日曜日、その違いがはっきり表れます。