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ゴミ屋敷化する自宅とセルフネグレクトが招いた心身の破綻
結局、食事は毎食コンビニの弁当やカップ麺に頼ることになりました。自炊の試みは成功しませんでした。さらに深刻だったのはゴミ出しです。自治体指定の分別方法や収集曜日が理解できず、ゴミを室内に放置し始めました。
離婚からわずか3ヵ月で、和雄さんの部屋は足の踏み場もない状態に陥ります。空き容器が積み上がり、悪臭が発生しました。掃除機をかける習慣もなく、浴室にはカビが繁殖します。和雄さん自身も洗顔や入浴の頻度が減り、身なりに気を配らなくなっていきました。頼れる家族もおらず、孤立を深めていったのです。
内閣府『令和7年版高齢社会白書』などのデータによると、65歳以上男性の一人暮らし割合は15.0%(令和2年)。同居家族以外に日常の困りごとで頼れる相手として「友人」を挙げた人は13.7%にとどまり、「近所付き合いがない」人も17.4%に達するなど、社会的孤立が顕著です。
東京23区における高齢単身者の自宅死亡件数は年間5,302件(令和6年)に上り、48.7%が孤立死を身近に感じています。このように家事不全や孤立からセルフネグレクトへ移行するリスクは高く、見守り体制の構築が急務となっています。
健康状態も悪化しました。栄養バランスの偏りから持病の高血圧が進行し、体重は半年で8キログラム減少します。「まさか自分が、カップ麺のお湯を沸かすことすら億劫になるとは思わなかった」と和雄さんは吐露します。
ある日、散らかった部屋の床で転倒し、起き上がれなくなった際、和雄さんは自身の置かれた状況を自覚しました。助けを呼ぶ相手もおらず、ゴミの中で一人、声を上げて泣き続けたといいます。
「金があっても、自分一人ではまともな生活すらできない。これほど無力だとは思わなかった。情けない、本当、情けない」
老後の自立において、金銭的な蓄えや年金額の確保は重要です。しかし、どれほど資金があっても、最低限の生活力が欠落していれば、健康さえ維持することは困難。「老後は夫婦水入らず」と当たり前のように思い描いていても、一人きりの老後が絶対ないとは言い切れません。万一に備えて生活力の向上を図ることも、老後安泰のためには必須といえそうです。