(※写真はイメージです/PIXTA)
「ばあちゃんの貯金、なんでこれしかないの?」
祖母の夫はすでに亡くなっていました。子どもは、アカネさんの母、その妹、そして弟の3人。ただし、弟は祖母より先に亡くなっています。そのため、亡くなった弟の一人息子が、父親に代わって相続人となりました。いわゆる「代襲相続」です。そんななか、いとこにあたる男性から出たのが、こんな言葉でした。
「ばあちゃんの貯金、なんでこれしかないの?」
祖母は長く養護教諭として働き、年金も月20万円ほど受け取っていました。そのため、もっとまとまった財産が残っているのではないかと考えたようでした。母からその話を聞いたアカネさんは、耳を疑いました。
「私は相続人ではないので、口を出す立場ではありません。でも、正直ものすごく腹が立ちました」
その背景には、いとこと祖母との距離もあります。いとこの父親、つまりアカネさんの母の弟が亡くなったあと、いとこが祖母のもとを訪れることはほとんどなく、晩年の介護にもほぼ関わっていなかったといいます。一方、祖母のお金を管理し、日々のことに対応してきたのはアカネさんの両親でした。
「父と母は、自分たちのお金まで出して、疑われないように全部記録していました。介護にもほとんど関わっていなかったのに、最後に残った金額だけ見て『なんでこれしかないの?』と言われたら、そりゃ腹も立ちますよ」
アカネさんが引っかかったのは、いとこに相続する権利があることではありません。
「祖母のお金は、相続人に残すためのお金じゃないですよね。おばあちゃん自身が生きるためのお金だったはずです」
約800万円が約300万円になったことについても、「500万円も減った」とは感じていません。
「100歳まで生きて、最後の4年間は施設で暮らして、それでも300万円残った。自分のお金で最後まで生活できた。それでいいじゃないですか」
専門家を入れて対応することに
アカネさんの両親は、いとこに感情的に反論することはしませんでした。祖母のお金については通帳や支出の記録が残っています。それでも、親族同士で直接やり取りすれば話がこじれる可能性もあると考え、専門家に相談することにしました。
「父も80歳、母も73歳です。母は『300万円しかないけれど、こんなことで揉めたくない』と言っていました」
祖母の財産やこれまでのお金の流れを資料として整理し、相続手続きだけでなく、必要なやり取りについても専門家を介して進めることにしたといいます。アカネさんも母にこう伝えました。
「もう自分たちで対応しなくていいんじゃない。疑問があるなら記録を全部見てもらえばいい。父と母には何も隠すことがないんだから」
「あとで疑われたくない」と何年も記録を残してきた両親。その記録が、結果として自分たちを守る材料になりました。
「800万円が300万円に」だけでは見えないこと
2026年9月15日に厚生労働省が公表した最新データでは、100歳以上の高齢者は初めて10万人を超えました。100歳まで生きることが以前ほど珍しくなくなれば、その分、介護や生活にお金が必要になる期間も長くなります。
「800万円あった預貯金が300万円になった」という数字だけを見れば、500万円が減ったことになります。しかし、施設での生活が4年間続き、医療費や日用品、自宅の維持費なども必要だったとすれば、財産が減ること自体は不自然ではありません。
高齢の親のお金を家族が管理する場合、通帳や領収書、支出の記録を残しておくことは、本人の財産を適切に管理するだけでなく、管理する家族自身を守ることにもつながります。そして相続財産は、相続人のために手をつけず残しておかなければならないお金ではありません。まずは本人が生きているあいだの生活のためのお金です。亡くなったときに「いくら残ったか」だけでなく、その人がどれだけ長く生き、どのような暮らしのためにお金を使ってきたのか。長寿化する社会では、そうした視点も重要になっていくでしょう。
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