(※写真はイメージです/PIXTA)
熟年離婚の実態、財産分与
厚生労働省『人口動態統計(令和6年概況)』を見ると、年間の総離婚件数18万5,904組のうち、同居期間が20年以上の「熟年離婚」は年間4万686組。全体の約2割を占めています。子どもの独立や定年退職といった生活環境の変化を契機に、それまで表面化していなかったり、蓋をしてみないふりをしたりしてきた価値観のズレや、夫婦関係の冷え込みを一気に清算しようとするケースは決して少ない例ではありません。
熟年離婚に伴う財産分与として、トモミさんの例で1点懸念事項も。夫が「退職金も口座の預金もすべて自分名義だ」と主張しても、法的な解釈は異なります。婚姻期間中に夫婦で形成した資産は、名義がどちらであっても原則として「共有財産」とみなされます。妻が扶養内でパートをしながら家庭を守り、夫の就労を支えてきた貢献度は高く評価されるため、原則として退職金を含む婚姻期間中の資産は2分の1ずつ分割する権利があります。さらに、離婚時には婚姻期間中の厚生年金記録(報酬比例部分)を分割できる「年金分割制度」も存在します。
また、トモミさんのように、長年夫の扶養内でパート勤務を調整してきた配偶者が離婚を迎える際、最も切実な壁となるのが社会保険料と生活費の全額自己負担です。
婚姻中は夫の扶養(第3号被保険者)に入っているため、自分で保険料を払わずに国民年金や健康保険の適用を受けられていました。しかし、離婚によって扶養から外れると、自分で国民健康保険料や国民年金保険料を支払うか、勤務先の社会保険に自ら加入して給与から天引きされることになります。
月数万円単位で社会保険料の固定支出が増える一方、一人暮らしの家賃や光熱費もすべて自分の肩に重くのしかかります。これまで収入を抑えてきたパート勤務のままでは暮らしていけず、かといって50代以降で突然フルタイム労働へ切り替えることには体力的にも雇用条件の面でも高いハードルが存在します。当面の生活費を受け取ったとしても、その後の長期的な生活破綻のリスクは高いといえるでしょう。
知識がないまま相手のペースに流され、不当な条件で協議離婚に応じてしまうと、本来受け取れるはずの財産や将来の年金を見過ごしてしまう危険があります。配偶者から突然の離婚を告げられた場合は、感情的に返答せず、弁護士や年金事務所などの専門機関へ速やかに相談し、正しい知識を持って冷静に交渉を進めることが大切です。
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