※写真はイメージです/PIXTA
豪華な施設に潜む見落としがちなリスク
その後、ホーム内で日々行われているマウント合戦にたびたび直面したという高橋さん。住んでいた地域や持ち家の立地、子供の就職先や身に着けている衣服のブランドまで比較の対象となります。挨拶を交わすたびに品定めされるような視線を感じ、高橋さんは居室で一人過ごす時間が増えていきます。
「2,000万円も払って、なぜ他人の顔色を窺わなければならないのか」
高橋さんは当時の心境をそう振り返ります。快適なはずの施設生活は、精神的な重荷へと変わっていきました。
内閣府『令和3年度 高齢者の日常生活・地域社会への参加に関する調査』によると、日常で「人との付き合いがない」と感じる高齢者は40.0%、「孤立している」と感じる人は21.2%に上ります。また、「職場の同僚と付き合いがない」人も33.5%。現役時代の肩書や職場の人間関係に頼ってきたシニアほど新たな環境になじめず、孤立や精神的ストレスを抱え込むリスクが高まりかねません。
施設側のスタッフも、居住者同士の人間関係には介入しづらいのが実情です。契約上のサービスや介護手配は完璧であっても、個人の価値観やマウント意識から生じる摩擦まで防ぐことは困難といえます。高橋さんのように、資金面での準備が万全であっても、コミュニティの空気感が合わずに居場所を失うシニアは後を絶ちません。
その後、高橋さんは入居から1カ月を待たずに退去し、別の施設へ引っ越しました。90日以内であれば、実費を除いて一時金は全額返還されるため、急いで退去したほうが得だろうと考えました。
老後の住み替えにおいて、重要なのは金額の高さや建物の豪華さだけではありません。どのような人々が暮らし、どのような雰囲気が形成されているか――できれば“コミュニティの文化”まで、事前に確認できるとベストです。