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夫婦間のルールなき「親心」が招く老後破綻のリスクと防衛策
怒りが収まらない浩一さんに対し、美智子さんは納得がいかない様子でした。
大樹さん夫婦には幼稚園の入園祝いや住宅ローンの補填、孫のイベント費用など、折に触れて数万から数百万円単位の手渡しを重ねていました。1回あたりの金額は小さくても、積み重なれば年間100万円を超えます。
美智子さんにとっては「我が子を支えるための当然の支出」であり、夫に相談すると反対されると意図的に黙っていたことも否めません。
浩一さんは大樹さんに正直な思いを伝えました。
「お前もいい大人だ。いつまでも親のお金をあてにするのもみっともない。これからは、今までのような援助は期待するな」
しかし、大樹さんも納得がいかなかったようです。
「俺は一度も『助けてくれ』なんて言っていない。それなのに、まるで俺が甘ったれているように言うのはおかしいだろ」
浩一さんと大樹さんの間に大きな溝が生まれ、しばらく冷戦状態に陥ったといいます。
内閣府『令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査』によると、60歳以上の高齢者が「今後、優先的にお金を使いたい対象」として「子や孫のための支出(学費、こづかい等)」を挙げた割合は25.8%(約4世帯に1世帯)にのぼります。
その一方で、今後の生活において「経済的な面で不安がある」と回答した世帯は92.6%と9割を超えており、具体的には「物価が上昇すること」(74.5%)や「収入や貯蓄が少ないこと」(47.1%)などが大きな不安要素となっています。
さらに、現在の貯蓄額について「生活の備えとして足りない」と感じている世帯も57.1%と半数以上を占めているのが実情です。
浩一さんは、美智子さんと、大樹さん家族への経済的援助をどうするか、話し合いをしました。そして基本的に誕生日などの記念日や、正月やクリスマスなどの行事以外では、金銭的な援助は行わないこと。また記念日等でも世間の平均を調べ、“あげすぎない”よう気を付けることを約束しました。
「今後も、進学祝いとか、受験のサポートなど、金銭的な援助が求められることはあるでしょう。ただ身を削ってまでやることではない。私たちは私たちの生活に責任を持たないといけません」
親の老後破綻は、結果的に子どもへ重い負担を強いることになります。退職金をはじめとする老後資金は夫婦の生活を支える共同財産。親心に流されることなく、自分たちの生活を守るための明確な線引きを設けることが不可欠です。