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腐食した構造部材と500万円に及んだ修繕費用
しかし、建物の内部では深刻な事態が進行していました。表面上の漏水は止まっていたものの、屋根の隙間から侵入した雨水はテープの脇を抜け、木造の柱や梁、天井裏の土台へと流れていたのです。水分を含み続けた木材は徐々に腐食し、やがて木材腐朽菌が繁殖していきました。
異変が表面化したのは、大きな台風が通過した直後のことです。2階寝室の天井が突然大きくたわみ、一部が音を立てて崩れ落ちました。異臭とともに湿った木くずや天井材の破片が室内に散乱します。
「いったい何が起きたんだ!」
驚いた池田さんは、初めて専門の建築業者に点検を依頼しました。調査に訪れた技術者は屋根裏や壁の内側を確認すると、硬い表情で池田さんに告げました。
「池田さん、これは相当危険な状態です。表面上は乾いて見えますが、内側の骨組みが腐食しています」
雨水が長年にわたり侵入し続けた結果、屋根を支える主要な木部が腐食し、耐震性に関わる構造骨組みまで損傷が及んでいました。さらに技術者は告げました。
「湿気を好むシロアリが広範囲に発生し、柱の内部を食い荒らしています」
後日、工務店から提示された見積書には「構造補強工事および屋根・外壁全面改修」として、総額500万円という数字が記載されていました。工事担当者は「初期段階で適切な修繕を行っていれば、数十万円で収まったはずです」と話します。
池田さんは、老後の備えとして蓄えていた預貯金から500万円を支払わざるを得なくなりました。月18万円の年金収入から取り崩した資金の重みは大きく、生活設計の見直しを余儀なくされています。
「目先の数万円を惜しんだ結果、500万円もの貯蓄を失うことになりました。自分の判断がいかに愚かだったか痛感しています」
国土交通省の「住まいの保護・メンテナンスガイド」等の公的資料では、屋根や外壁の定期点検および補修は10年から15年周期で行うことが推奨されています。雨水の浸水や構造の腐食を長期放置した場合、改修費用は初期補修時の数倍から十数倍に跳ね上がることも珍しくありません。
住宅の異変に気づいた初期段階で専門家に点検を依頼し、適切な修繕を行う。結果として老後の家計を守る最良の選択になるケースも多いでしょう。目先の出費を回避する「その場しのぎ」の節約は、将来的に家計を大きく圧迫するリスクを秘めているのです。