自営業やフリーランスとして長年働いてきた人にとって、国民年金のみの老後の収入では物価高や医療費の増大に対応しきれず、経済的に限界を迎えるリスクが高いです。貯蓄が底をつきかけたとき、生活を守るためのセーフティネットとして機能するのが公的支援です。本記事では、FP事務所MoneySmith代表の吉野裕一氏が、田村誠さん(仮名)の事例とともに生活保護申請の実態に迫ります。※個人の特定を避けるため、事例の一部を改変しています。
「お金持ちの家族がいるから無理かな…」年金月5万円・貯金ゼロ・腰痛で働けない68歳元自営業の独居男性、生活保護申請の役所で告げられた〈思いがけない一言〉【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

生活保護世帯の半数以上が高齢者…「国民年金だけ」の厳しい現実

厚生労働省の「被保護者調査」によれば、2026年6月時点で生活保護を受けている世帯は約164万世帯。このうち高齢者世帯は90万世帯超と、全体の55%前後を占めています。しかもその大半が単身の高齢者世帯です。

 

背景にあるのが、公的年金だけでは生活できない層の広がりです。自営業者やフリーランスが加入するのは原則として国民年金のみで、40年間欠かさず納めた「満額」でも受給額は月7万円程度にとどまります。過去に保険料の未納・免除期間があれば、当然この金額はさらに下がります。

 

厚生年金がある会社員と異なり、老後の収入を国民年金だけに頼らざるを得なかった人にとって、田村さんのような「月5万円前後」という受給額は決して特殊な例ではないのです。

生活保護を嫌がる人たち

低年金の高齢者のなかには、生活保護に対して「恥ずかしい」「親族に知られたくない」という心理的なハードルを感じやすい傾向があります。しかし、申請をためらった結果、生活保護費以下の年金収入で暮らし続けているとすれば、それは制度の趣旨から外れた状態といえるでしょう。

 

◎扶養照会は援助を強制するものではなく、断ることができる

◎家族に資力があっても、それだけで保護が却下されるわけではない

◎年金収入が低い場合は「年金生活者支援給付金」などほかの制度も合わせて確認する

◎一人で判断せず、まずは福祉事務所や地域包括支援センターに相談してみる

 

生活保護は「最後の手段」ではなく、憲法が保障する国民の権利の一つです。年金だけでは立ち行かないと感じたときは、ためらわずに窓口を訪れてみてはいかがでしょうか。

 

昔は「年金だけで生活できる」と考えられていた時代もありましたが、インフレーションによって、同じ金額でも実質には年金収入の減少につながります。これからはインフレーションによってお金の価値が下がるリスクを考慮しておかなければなりません。

 

以前の年金額は物価連動で変動していましたが、現在は「マクロ経済スライド」という仕組みが導入されるようになりました。これにより、物価変動や現役男子の賃金の変動に連動したあとに、スライド調整が採られて物価などよりも上昇率が低くなっていることで、年金水準が減少しています。

 

老後の生活が苦しくならないように、年金保険料の納付はもちろんのこと、若いうちから老後資金の準備を考えた資産形成が必要です。

 

〈参考〉

厚生労働省「被保護者調査」(令和8年6月分概数)

https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/74-16.html

厚生労働省「生活保護制度」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/index.html

日本年金機構「令和8年4月分からの年金額等について」

https://www.nenkin.go.jp/oshirase/taisetu/kojin/2026/202604/0401.html

 

 

吉野 裕一

FP事務所MoneySmith

代表