※写真はイメージです/PIXTA
親の資産把握と公的支援の活用が老後破綻を防ぐ
毎月15万円以上の持ち出しが続けば、1,500万円あった貯蓄は数年で底をつきます。真由美さんが懸念したのは、自分たちの定年後の生活崩壊でした。賢治さんには弟が一人いますが、遠方に居住していることを理由に話し合いを避けていました。
親の介護において避けるべきなのは、子世代の資産をそのまま補填に充て続けること。
厚生労働省『2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況』によると、要介護者等と同居する主な介護者のうち、60歳以上の割合は78.8%に上り、要介護者・介護者ともに60歳以上である世帯も79.0%に達しています。
このように、自身が定年退職や年金生活に入る60代以降のタイミングと、親の要介護化が重なるケースは一般的です。同調査では高齢者世帯の52.1%が生活意識を「苦しい」と回答しており、介護に伴う予期せぬ持ち出しや負担増が、子世代の老後生活を脅かすリスクも浮き彫りとなっています。
賢治さん夫婦のケースにおいて問題だったのは、フミさん自身の資産状況を正確に把握していなかった点です。怒りが収まらない真由美さんに促され、賢治さんはようやく実家の片付けを行い、フミさんの口座通帳や不動産の権利証を確認しました。その結果、フミさん名義の預金が約500万円残されていることが判明したのです。
さらに、賢治さんは弟と話し合いの機会を持ちました。フミさんの預金を解約して毎月の不足分に充てることにし、残りの不足額については兄弟で折半して負担することにしました。あわせて、地域包括支援センターへ相談し、高額介護サービス費制度や自治体の独自の介護手当の申請手続きを行いました。
親の介護費用は、原則として「親の所有する資産と年金」の範囲内で賄うのが鉄則。子が自分の生活費や老後資金を犠牲にして補填を続けると、親子共倒れのリスクが高まります。
定年前の段階で、親の年金額や所有資産、所有不動産を確認しておく作業は欠かせません。また、介護が必要になった初期の段階で兄弟姉妹と役割や負担割合を明確にし、必要に応じて公的制度の活用を検討することが、老後の夫婦関係と家計を守る上で不可欠です。