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実家は「子どものために残すもの」…とは限らない
直人さんはその後、母親の住み替えについて具体的に話を聞きました。
京子さんは、家の売却費用を施設に入るために使うと言い、直人さんに残すお金はないと話します。
「私が元気なうちに、自分の生活を決めておきたい」
そう言われて、直人さんは何も言えませんでした。
自分にとって、実家は「最後に戻れる場所」でした。しかし、母親にとっては、そこに住み続けるか、売却するか、「選択しなければならない場所」だったのです。
月収15万円で東京に住み続けるのか。
仕事を変えるのか。
実家に戻るという選択肢がなくなった場合、どこで暮らすのか。
そして何より、48歳になった今から、老後に向けてどれだけ準備できるのか。
「実家があるから大丈夫」と考えていた30年間で、自分自身の住まいや収入について具体的に考える機会を逃していました。
「やばい、俺の人生詰んだわ」というのが、最近の直人さんの口癖だといいます。
総務省『令和5年住宅・土地統計調査』によると、全国の空き家数は過去最多の900万2,000戸、空き家率は過去最高の13.8%となりました。このうち、賃貸・売却用や二次的住宅を除く「使用目的のない空き家」は385万6,000戸に上ります。
特に一戸建ての空き家(352万3,000戸)においては、実に80.9%(285万1,000戸)がこの「使用目的のない空き家」であり、マンション等の共同住宅(賃貸用が約8割)と比べて活用も売却もされず放置されやすい実態がうかがえます。
さらに、世帯所有の空き家を取得した理由を見ると「相続・贈与」が61.6%と約6割を占めています。親が良かれと思って残した実家であっても、子どもが引き継いで使うとは限らず、将来的に持て余してしまうケースが多いのが現実です。そのため、親自ら“実家じまい”をするケースも増えています。
頼りの実家を失うことになった直人さん。もっと親とコミュニケーションを取り、実家に戻ることを話していれば、事態は変わっていたのかもしれません。