「共働きなんだから半分ずつね」──。夫婦ともに働いているなら、生活費を折半する。一見すると、もっとも公平でわかりやすい方法に思えます。総務省「家計調査」によると、2025年の二人以上の勤労者世帯では、実収入は月平均65万3,901円、可処分所得は53万2,408円、消費支出は34万6,297円でした。共働きで一定の収入があっても、出産や育児を機に一方の働き方や収入が変われば、結婚当初に決めた「50:50」が重い負担になることもあります。東京都内に暮らす共働き夫婦の事例をみていきます。
共働きなんだから半分ずつね!〈世帯年収1,270万円〉38歳夫、産休・育休中も「生活費折半」…6年間続けた折半生活に36歳妻が疑問を抱いたワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

出産後、妻に集中していった「ケアの負担」

しかし、子どもが生まれると、「半分ずつ」という家計のルールとは別のところで、夫婦の負担に差が生じ始めました。夜泣きへの対応、授乳や離乳食、予防接種や健診、保育園の準備、送迎。タクヤさんも家事や育児をまったくしないわけではありません。ただ、子どもの生活に合わせて自分の予定を動かすのは、いつの間にかユリさんの役割になっていました。

 

保育園から、「熱があるので迎えに来てください」と連絡があれば、仕事を切り上げるのはユリさん。朝、子どもの体調が悪ければ、会社に休みの連絡を入れるのもユリさん。病院へ連れていき、薬を受け取り、その後の体調を気にするのも、主にユリさんでした。

 

夫婦で明確に「妻が担当する」と決めたわけではありません。「今日は私のほうが予定を動かしやすいから」「夫は大事な会議があるから」と、一つひとつ対応しているうちに、徐々にユリさん側へ偏っていったのです。こうした状況は、ユリさん夫妻だけに限った話ではありません。

 

内閣府「令和7年版 男女共同参画白書」によると、6歳未満の子どもがいる夫婦では、すべての都道府県で、妻の家事関連時間が夫より210分以上長くなっています。全国平均では、妻の家事関連時間は1日446分、夫は113分。反対に仕事関連時間は、妻169分に対して夫488分でした。白書は、こうした状況について「男性は仕事、女性は家庭」という性別による固定的な役割分担が依然として残っていることがうかがえるとしています。つまり、共働き家庭が増えても、育児や家事といったケアの負担まで同じように分担されているとは限らないのです。

 

復職後、ユリさんは時短勤務を選びました。夕方には保育園へ迎えに行かなければならず、以前のように残業をすることは難しくなりました。一方、タクヤさんは出産前とほぼ同じ働き方を続けています。

 

ユリさんは当時を振り返って、こう話します。

 

「家計はずっと半分ずつだったんです。でも、仕事を休んだり、早退したり、子どもの予定を管理したりするのは、ほとんど私でした。変な言い方ですが、夫は思い切り残業ができていいな、なんて思っちゃいました」

お金の「小さな立て替え」も妻側に

さらに、子どもが生まれると細かな出費も増えていきました。オムツ、衣類、離乳食の材料、保育園用のタオルや着替え、薬局で買う日用品。もちろん、大きな買い物は共同口座から出します。しかし、数百円、数千円程度の支出については、「あとで精算するほどでもないか」と、ユリさんが自分の財布から支払うことも少なくありませんでした。

 

一つひとつは大きな金額ではありません。ただ、それが毎週、毎月と積み重なっていきました。しかも、ケア労働の負担は、こうした直接的な支出だけに表れるものではありません。保育園の呼び出しで早退する。子どもの発熱で仕事を休む。送迎のため残業を諦める。

 

こうした時間の負担が一方に集中すれば、その人が働いて得られる収入や、仕事上の機会にも影響する可能性があります。