「親身に相談に乗ってくれた」「タダだから損はない」――そう思って利用した「無料相談」が、実は高額な買い物の入り口になっているケースは少なくありません。本記事ではニックFP事務所のCFP山田信彦氏が、尾形さん(仮名)の事例をから、「無料相談」の落とし穴について解説します。※個人の特定を防ぐため、事例の一部を脚色しています。
「タダ」に飛びついた俺は、まんまとカモにされていたのか…年金暮らしの68歳独身男性が青ざめた“消えていく無駄な保険料”。通い詰めた〈保険代理店〉のワナ【CFPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

笑顔の無料相談で手に入れた「保険」と「投資信託」

いまから6年前、当時68歳だった尾形さんは、年金と蓄えで暮らす独身男性です。趣味らしい趣味はありませんが、コロナ禍でもマスクを付けて街の「無料相談会」を巡ることは、話し相手を見つける意味でも楽しい時間でした。

 

「豊富な情報がタダで手に入る」と尾形さんが最初に足繁く通ったのは、来店型保険ショップです。

 

「尾形様にもしものことがあったら大変です」

 

担当した若い女性相談員に優しく微笑まれ、手厚い医療保険と変額保険を提案されます。「こんなに親切にしてくれるなんて」と感激した尾形さんは、3回の無料相談の末に2つの保険を契約しました。

 

尾形さんが次に目をつけたのは、IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)の無料資産運用セミナー。担当者は金融機関から独立した「中立な立場」であることを強調し、言葉巧みに尾形さんの信頼を勝ち取っていきました。

 

「尾形様の大切な資産を減らさないために、最適な商品をご紹介します」

 

IFAに勧められるままの投資信託を購入していただけの尾形さん。ですが、「さすが、今回のご選択もお目が高い」と毎回褒められるので、心が満たされたそうです。

たどり着いたのは「こんなはずじゃなかった」終の棲家

尾形さんの「無料相談好き」は一事が万事でした。

 

スマホの買い替えでキャリアショップを訪れた際にも、「初期設定や使い方サポートを無料にする代わりに、指定の有料アプリにいくつか加入する」という提案を受けます。

 

「初月無料ですし、不要ならあとで解約すればいいだけです」

 

そう説明されたものの、尾形さんのスマホには動画配信サービスや健康管理アプリなど、見覚えのないアイコンがいくつも並ぶことになりました。

 

そんな尾形さんが「無料相談」の本当の恐ろしさを思い知ったのは、今年74歳となり、足腰が弱りはじめてからのことです。施設を探すため、彼は「老人ホーム無料紹介センター」の扉を叩きました。

 

担当者は丁寧なヒアリングの末、豪華なパンフレットを開きながら手厚い介護を謳う施設を熱心に薦めてきます。「尾形様にぴったりの素晴らしい施設です」との言葉を信じ、入居を決意しました。

 

しかし、入居してみると現実は過酷なものだったのです。スタッフは慢性的な人手不足に陥っており、呼び出しベルを鳴らしてもなかなか来てくれません。食事も尾形さんの口には合いませんでした。

 

誰も訪ねてこない狭い個室で、尾形さんは毎月引かれる高額な管理費の明細を眺めながら、「なにかがおかしい」と感じはじめます。そんな折、ネットサーフィンをしていると、商品を売らないことを約束している、ある独立FPのホームページを見つけます。「よし、このFPに相談してみよう」と、「初回1時間無料相談」の予約を取り、さっそく事務所を訪問することに……。