結婚する際に夫の希望で退職し、25年間専業主婦として家庭を支えてきた女性。しかし、物価高や教育費で家計が圧迫されると、夫から思いもよらぬ不満をぶつけられます。ある事例から、熟年夫婦が直面する家計の危機をみていきます。
「あんたが仕事を辞めろと言ったんだろ!」〈専業主婦歴25年〉の53歳女性、〈月収68万円〉55歳夫にキレた納得のワケ ※写真はイメージです/PIXTA

「仕事を辞めてくれ」と言ったのは夫だったのに…

佐藤真紀さん(53歳・仮名)は、東京都内のマンションで夫の浩二さん(55歳・仮名)と暮らしています。

 

浩二さんはメーカー勤務の管理職です。手取りは月約68万円。真紀さんは25年前、結婚した直後に勤めていた会社を退職しました。

 

「結婚する前に夫に言われたんです。『結婚したら、仕事は辞めてほしい。俺が働くから、家のことを頼む』と」
その後、2人の子どもが生まれました。真紀さんは育児と家事を担い、子どもたちの学校行事や受験にも対応してきました。

 

夫婦が購入したマンションの住宅ローン返済は月14万円。管理費と修繕積立金を合わせると、住居費は月17万円近くになります。

 

食費は約8万円。光熱費や通信費、保険料などを含めると、毎月の生活費は40万円を超えました。さらに長男は大学生で、学費や仕送りも必要です。

 

厚生労働省『2025(令和7)年 国民生活基礎調査』によると、児童のいる世帯における生活意識は「大変苦しい」が27.6%、「やや苦しい」が33.9%で、合わせて61.5%が「苦しい」と回答しています。同世帯の平均所得金額は857.3万円ですが、物価高や教育費等の支出増が生活を脅かしている現状がうかがえます。

 

さらに、同調査において他者への「仕送り」を行っている世帯は全体のわずか4.9%(1万世帯中493世帯、うち「子への仕送り」は304世帯)にすぎません。一般的な家庭と比べても、大学生への仕送りと高額な住居費の二重負担が、佐藤家の家計を圧迫していました。

 

以前は、浩二さんのボーナスを貯蓄に回せていました。しかし、物価上昇や教育費の増加で余裕はなくなりました。

 

そんななか、浩二さんが口にしたのが、「家計が苦しいなら、お前も働けばいいだろ」という言葉でした。

 

「最初は耳を疑いました。私が働かなかったんじゃない。会社を辞めてほしいと言ったのはあっちですよ」

 

真紀さんは、若いころに勤めていた会社を辞めて以降、正社員として働いた経験がありません。パート勤務を探そうとしたこともありました。しかし、子どもが小さい時期には浩二さんから「家にいてほしい」と言われました。

 

「子どものことは全部、私がやってきました。夫は『仕事が忙しい』で終わりです。それなのに今になって、私が何もしてこなかったような言い方をされるんです」