厚生労働省『令和6年国民生活基礎調査』によると、65歳以上の人がいる世帯は全世帯の半数。そのうち一人暮らしは33.8%を占めています。家族が別々に暮らす時代、「家族だから」と踏み込んだことが、思わぬ亀裂を生むこともあります。今回は、72歳男性の事例から、その実態をみていきます。
「お義父さん、もう来ないでくれますか」…〈年金月16万円〉〈預貯金2,200万円〉72歳男性、32歳義娘から拒絶。きっかけとなった「LINE」の中身 ※写真はイメージです/PIXTA

嫁、限界。「もう来ないでくれますか」と言いたいが…

孫の1歳の誕生日を前にしたある休日。茂さんは翔太さんに電話をかけました。

 

「今度の日曜日、遊びに行っていいかな?」

 

すると、翔太さんは少し間を置いて答えました。

 

「父さん……しばらく、来ないでくれないか」

 

茂さんは耳を疑いました。

 

「美咲が疲れているんだ」

「今は家に来られること自体が負担なんだ」

 

それ以上、翔太さんは詳しいことを話しませんでした。実はその少し前、美咲さんは翔太さんにLINEを送っていました。

 

「お義父さん、もう来ないでくれますかって言いたいくらい、しんどい」

「お義父さんが嫌いなわけじゃない。でも、来るたびに子どものことを聞かれて、私がやっていることを否定されているように感じる」

 

美咲さんのLINEを受けて、翔太さんは自分の言葉で訴えたのです。

 

「父さんが悪いわけじゃない。でも、どうしても来られると気を遣ってしまうんだ」

 

そこで初めて、茂さんは考えました。

 

孫に会いたい。

成長を見たい。

何か買ってあげたい。

 

自分の気持ちを押し付けていただけだったと。それ以来、茂さんは自分から息子夫婦の家を訪ねることはなくなりました。孫の写真が送られてきても、「かわいいね」と返信するだけです。何か贈りたいときも、まず翔太さんに相談します。

 

「正直、寂しかったです。でも自分の都合だけを押しつけるのは違うと思いました」

 

しかし、しばらくすると翔太さんから「今度の日曜日、よかったら昼ご飯を食べに来ない?」などと誘ってくれるようになりました。

 

そして遊びに行ったときには、育児の話になっても、自分の経験を持ち出さない、「昔はこうだった」と言わない、何か気になることがあっても、口を挟まないよう気を付けたといいます。

 

すると美咲さんから「今日はありがとうございました。またいらしてください」と言ってもらえるようになったそうです。

 

「家族とはいえ、心地いい距離感があるんですね。勉強になりました」

 

国立社会保障・人口問題研究所『第7回全国家庭動向調査』によると、母親との距離が「60分未満」の近居割合は72.1%に上り、スープの冷めない距離で暮らす親子は多いのが実情です。しかし、子育てにおける「親(祖父母)」への依存度は低下傾向にあり、「平日の昼間の1歳から3歳児の世話」において親を頼る割合は、2008年の13.0%から2022年には7.4%へとほぼ半減しました。