退職後に社会的な繋がりが希薄になりやすいシニア世代。その矛先が、家族への過度な執着を生むことも。遠方に住む親と都市部で暮らす子ども世代――お互いを思いやる気持ちはあるものの、度重なる訪問や価値観の違いによって、関係性に亀裂が入ってしまっては元も子もないでしょう。事例を紹介します。※個人の特定を防ぐため、事例は一部脚色しています。
「私を採点するのはもうやめてください…」退職金2,300万円が振り込まれた翌週、離婚届を提出された元学年主任の68歳男性。孫の運動会で大興奮も、〈孫への500万円の生前贈与〉を息子夫婦から拒否されたワケ (※画像はイメージです/PIXTA)

1年後、電話を掛けてくれた孫

運動会から1年が経ったころ。知らない電話番号から電話がかかってきました。出てみると、孫のMくんでした。携帯電話を買ってもらったとのことです。

 

「おじいちゃん、算数のテストで100点だったよ」

 

その言葉に祖父Yさんは大喜びしましたが、同時に、「これを続けないと実力じゃない」という言葉が出てきそうになるのに気づき、必死に言葉を飲み込みました。「よく頑張ったね、すごいぞ」YさんはそれだけMくんに伝えました。

 

「おじいちゃん、来週は運動会なんだけど見に来てくれるかな? 走るのも速くなったんだよ」

 

Yさんは戸惑いました。息子夫婦が許可してくれるかわからなかったからです。幸い、息子の妻Kさんから翌日電話があり、Mくんが望んでいるので見にきてもいいとのこと。ただし、部活の顧問ごっこはやめてくださいと釘を刺されました。

 

Yさんは喜び、当日の病院の予約を変更し新幹線の切符も買いました。元妻と息子夫婦が話し合った末に、誘ってくれたのだろうと思っています。

 

「自分は、決して息子や孫を虐待したいわけじゃない、現役時代の生徒に対してもそうだ、みんな子どもたちが可愛いあまりに心配で厳しい言い方になっただけなんだ」。そう思いましたが、そんなことを誰かにいっても誰も理解はしないでしょう。たしかにそれによって不快な思いをさせたなら、それは虐待と呼ぶのかもしれません。

 

「悔しいけれど、それが現実。気を付けよう」。そう、運動会の前の日の午後の新幹線に乗り込みました。

 

 

長岡 理知

長岡FP事務所

代表

 

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