年金暮らしの親が直面する、孫へのお小遣いや金銭的支援の悩み。良かれと思った行動や無理なやりくりが、時に家族のすれ違いを生むこともあります。ある父娘の事例から、適切な金銭的距離感やコミュニケーションのあり方を考えます。
〈年金月15万円〉孫に「1万円」を包み続けた75歳父、「もうお小遣いは無理」と謝った翌日、48歳娘から届いた「怒りのLINE」の中身 ※写真はイメージです/PIXTA

娘「お金が目的だと思ってた?」

翌日のことです。スマートフォンに美穂さんからLINEが届きました。

 

《なんで謝ったの?》

 

徹さんは、娘が怒っているとは思いませんでした。ところが、その後に続いた文章を読んで、手が止まりました。

 

《お父さん、私たちがお金目当てだと思った?》

《孫に1万円をくれなくなったことより、そういうふうに考えてたことがショック》

《今まで無理して渡してたなら、最初からそう言ってよ》

《「もう無理、ごめん」って言われたら、こっちは責めてるみたいじゃん》

 

美穂さんの家庭にも余裕があるわけではありません。夫は会社員で年収約620万円。美穂さん自身も家計を支えるためにパートに出ています。中学生になった長女と、小学6年生の長男。住宅ローンの返済は、あと20年以上あります。父からの1万円は、家計にとって無視できる金額ではありませんでした。ただ、美穂さんは「生活費として頼っていたわけではない」と言います。

 

「もちろん、1万円は助かっていました。でも、それ以上に父が孫を気にかけてくれていることがうれしかったんです」


だからこそ、「ごめん」という言葉が引っかかったのです。

 

それに対し、徹さんは「お小遣いがなくなると、関係が変わると思って……正直、怖い気持ちがありました」と明かします。

 

その後、徹さんは美穂さんに正直に家計の状況を伝えるようになりました。そのうえで、誕生日のお祝いやお年玉のときだけお金を渡す、ほかの場面ではお金は渡さないことを徹底しました。

 

「こちらの家計を知っているから、少しでも身の丈に合わない金額を包むと、“お父さん、出し過ぎ”と怒られます」

 

また、美穂さんはお小遣いがなくなったあとも、変わらず、子どもたちを連れて遊びに来てくれるといいます。

 

国立社会保障・人口問題研究所『第7回全国家庭動向調査』によると、有配偶女性が経済的に困ったときに最も頼る相手は「親」が59.2%にのぼり、依然として世代間の経済的支え合いが大きな役割を果たしています。

 

その一方で、別居する親から受ける経済的支援は「5万円未満」の少額が中心(近居の父親からは45.8%)という傾向もあり、家族間の見守りや関係維持として機能している実態があります。徹さん・美穂さんのように、高齢の親が自身の家計状況を正直に伝え、子ども側も「金額より孫を気にかけてくれる姿勢」を尊重することは、親の生活設計を守りつつ、良好な関係を長く維持するためのカギになりそうです。