「お義母さん、やめてもらっていいですか?」――十分な世帯収入があり順風満帆に見えても、夫婦間でお金や自立に対する意識が一致しているとは限りません。ある夫婦の危機をみていきます。
「お義母さん、やめてもらっていいですか?」〈世帯年収960万円〉42歳妻、義実家に来るなり言い放った「キツイひと言」に45歳夫、絶句 ※写真はイメージです/PIXTA

母からの「お小遣い」を隠していた夫

問題が決定的になったのは、夏休みの帰省でした。美里さんが子どもの迎えから戻ると、直樹さんと幸子さんが台所で話していました。

 

「これ、今月の分ね」

 

幸子さんが封筒を差し出しました。

 

「ありがとう」

 

直樹さんは、そのままポケットに入れました。その光景を見ていた美里さんは、無性に腹が立ったといいます。

 

家では毎月のお小遣いを3万円に決めています。直樹さんは「足りない」と言うことがありますが、美里さんは家計から増やすことを断っていました。住宅ローン、子どもの塾代、食費。毎月の収入から支出を引けば、自由に使えるお金は決して多くありません。しかし、そのなかでやりくりしないといけない、身の丈に合った生活をしたらいい――そう思っていました。一方で夫は、実家に帰れば追加のお金を受け取っていました――。

 

「お義母さん、やめてもらっていいですか?」

 

美里さんが少し強い口調で言います。幸子さんは驚いた顔をしました。

 

「お金を渡すのはやめてください。いい大人がお小遣いをもらうのを、私はもう見過ごせません」

 

直樹さんは突然のことで言葉を失いました。幸子さんは、「ちょっとした金額だから」と反論しましたが、美里さんも引きません。

 

「お義母さんが悪いと言っているんじゃありません。問題は、直樹さんが自分から断らないことです。家では子どもの教育費が――なんて話をしているのに、実家に帰るとお金をもらう。矛盾していると思うんです」

 

さらに直樹さんに対しても怒りを露にしました。

 

「あなたも45歳だよ。恥ずかしくないの、いつまでもお母さんにお小遣いをもらって」

 

自宅に帰ったあと、直樹さんには幸子さんからお小遣いをもらうのは禁止だと念を押しました。さらに家計を見直し、幸子さんに月1万円程度、お小遣いを渡せるように捻出しました。

 

「夫は45歳。お義母さんを支えるべき年齢です。月1万円しか出せませんが、美味しいものでも食べに行ってもらえたら」

 

国立社会保障・人口問題研究所『第7回全国家庭動向調査』(2022年調査)によると、18歳以降に母親から「生活費」の支援を受けた割合は、近居の結婚した息子で22.8%に上ります。また、子どもがいる既婚女性が経済的に困った際に頼る相手も「親」が59.2%で最多を占めており、結婚後も親子間の経済的な結びつきが根強く残っている実態が窺えます。

 

成人して自立した後も親から支援を受ける親子関係は珍しくありませんが、ローンや教育費を抱え倹約に励む子育て世代にとって、この「親への甘え」に対する夫婦間の認識のズレは、時に家族対立を招く火種になり得るようです。