老後、「孫への浪費」に走ってしまう高齢者は少なくありません。家族への依存がすれ違いを生む背景には、単身世帯が増加する現代特有の人間関係の課題が存在します。ある親子の事例から、老後の寂しさとどう向き合い、充実したセカンドライフを築くべきか、考えていきます。
「孫に依存していました」…〈年金月20万円・貯蓄3,200万円〉72歳女性、寂しい老後生活で気づいたこと ※写真はイメージです/PIXTA

「お金を出すから来て」とお願いしていた本当の理由

そんな状況に変化が生じたのは、長男からの何気ない一言がきっかけでした。

 

「母さん、今月はちょっと忙しいから、また来月にするよ」

 

美智子さんは思わず言いました。

 

「じゃあ、交通費出すから来てよ」

 

電話の向こうで、長男が少し黙り込みます。

 

「いや、そういう問題じゃないから」

 

その言葉が、美智子さんには引っかかりました。その後も、孫に会いたい気持ちは消えません。そんな折、友人にその思いを吐露すると、「お金でどうにかしようとしていると、お子さん(長男)にも避けられちゃいますよ。私はそうでした」と体験談を交えた助言を受けました。

 

「ハッとしました。私は孫に会いたいんじゃなくて、寂しさを埋めるために、お金をチラつかせていたんだと……」

 

これまで、子や孫のために使っていたお金は、単に寂しさを埋めるためだった……そう自覚した美智子さん。「孫依存はやめます」と宣言し、子や孫との関係を変えることにしました。

 

プレゼントを買う回数を減らしました。

食事代も毎回負担するのをやめました。

そして、自分から「会おう」と誘うことも控えるようにしたのです。

 

代わりに始めたのが、週2回の地域の体操教室です。月謝は8,000円。交通費を入れると1万円を超えます。
そこで知り合った同年代の女性とは、教室のあとにランチを楽しむようになりました。

 

また友人と旅行に行く機会も増加。毎日をアクティブに楽しむことを、「もう70代だから」と自制していた気持ちがありましたが、「年齢のせいにして、人生をつまらなくしているのは自分」ということに気づいたといいます。

 

内閣府『令和7年 人々のつながりに関する基礎調査』によると、社会活動に「参加している」人で「頼れる人も相談相手もいない」孤立状態にある人の割合は3.6%ですが、「特に参加していない」人では8.3%と倍以上に跳ね上がることが示されています。また、不安や悩みの相談相手が「いない」人は、孤独感を「しばしばある・常にある」と感じる割合が23.4%(「いる」人では2.5%)に達します。

 

家族への過度な依存から脱却し、地域活動を通じて自立的に社会参加し、気軽に話せる仲間や相談相手を見つける――老後の孤独・孤立を防ぎ、人生をアクティブに楽しむための重要なステップといえるでしょう。