文部科学省の「令和5年度子供の学習費調査」によると、公立小学校に通う子ども1人あたりの年間学習費総額は平均36万6,599円(学校教育費:7万4,336円、学校給食費:3万5,774円、学校外活動費25万6,489円)です。一方、私立小学校では総額174万1,516円(学校教育費:97万8,271円、学校給食費:5万3,578円、学校外活動費:70万9,667円)と、約4.7倍の経済格差が存在します。特に、習い事や旅行などの体験にかける「学校外活動費」は公立でも年間約25.6万円に達しており、子育て世帯にとって重い負担となっています。事例を通して、子どもの学校以外にかかる教育費について解説します。
祖父母の家へ帰省、いとことの海水浴、マグロづくしの回転寿司…夏休みを大満喫したはずの小4息子。新学期、「海外旅行に行った同級生」を知った日 (※写真はイメージです/PIXTA)

祖父母宅で楽しんだ夏休み

都内の公立小学校に通う小学4年生のハルトくん(仮名)。3人兄弟の長男で、5人家族で暮らしています。今年の夏休み、ハルトくん一家は新幹線に乗って母方の祖父母宅へ帰省しました。

 

ハルトくんにとっては、久しぶりに会ういとこたちと一緒に近所の海へ出かけて泳いだり、夜にはみんなで大好きな回転寿司へ行って大好物のマグロばかりを選り好みして食べたりしたことが夏休みのハイライトでした。花火やスイカ割りも楽しんで日焼けした顔を見せる息子に、両親は「いい思い出ができてよかった」と笑い合っていたのです。

 

帰省費用やレジャー代を含めると、出費は15万円程度。決して軽いものではありません。それでも、ハルトくんが「今年の夏休みもすごく楽しかった!」と嬉しそうに話す姿を見て、親としての役割を果たせたような気持ちでいたといいます。

新学期初日、少し落ち込んで帰ってきた息子

ところが、新学期が始まったその日、学校から帰ってきたハルトくんの様子が少し変でした。普段なら学校での出来事を自分から楽しそうに話すのに、その日はどこか口数が少なく元気がない様子です。

 

気になった母親が声をかけると、休み時間にあった出来事をぽつりと話しはじめました。

 

「今日、クラスのみんなで夏休みの話になって……。Aくんが家族でハワイに行ったんだって。そうしたらBくんも『うちもハワイに行ったよ。ホテルのプールで偶然会ったんだよね』って盛り上がっていて。海外の海とか、大きなホテルの話を聞いてたら、うちの夏休みって普通なのかなって思っちゃって」

 

楽しかったはずの夏休みの思い出が、友達のハワイ旅行の話を聞いたことで、ハルトくんにとっては物足りないものに感じられてしまったようです。そのときには「よそはよそ。うちはうち」と返したものの、母親自身も考え込んでしまいました。

周囲の家庭環境

ハルトくんが通う小学校がある地域は教育熱心な家庭が多く、私立中学へ入るために高学年になったら塾に通い出す子やすでに通っている子も珍しくありません。

 

ハワイに行っていたというAくんは一人っ子です。また、現地で会ったというBくんのお母さんは実家がかなり裕福であることを、ハルトくんの母親も保護者同士の付き合いの中で知っていました。それぞれの家庭に経済的なゆとりがあるからこその選択なのだろうと納得がいきます。

 

その日の夜、子どもたちが寝静まったあと、母親は父親にハルトくんの話を打ち明けました。

 

「今日、ハルトが友達のハワイ旅行の話を聞いて、ちょっと落ち込んで帰ってきたの。いまの物価高や円安を考えると、うちで子ども3人を連れて家族5人で海外旅行なんて無理よね……」

 

実際に、家族5人(大人2人、小学生3人)で夏休みにハワイ旅行(4泊6日程度)へ行こうとすれば、以下のような費用がかかります。

 

航空券代(5人分): 約80万〜100万円

宿泊費(5人が泊まれる部屋): 約40万〜60万円

現地での食費・移動費・アクティビティ代: 約30万〜40万円

合計費用: 約150万〜200万円

 

円安や現地の物価高の影響もあり、外食ひとつをとっても日本の4倍程度の費用がかかるのが現在のハワイ旅行の現実です。

 

父親も「家族5人分の航空券とホテル代だけで150万円以上、現地の滞在費を入れたら200万円近くかかってしまう。日々の生活費や、これから増えていく子ども3人分の教育費を考えると、アジアへの旅行ですら無理だよ」と答えます。

 

子どもにいろいろな経験をさせてあげたい気持ちはあるものの、家族5人での海外旅行は家計の現実からあまりにも遠く離れています。ほかの家庭と比べてしまった息子の気持ちを受け止めつつも、親としてなにができるか、夫婦で改めて相談していくことになりました。