身寄りのないおひとり様にとって、高齢者施設への住み替えは人生の大きな転機です。しかし、本当に大切なのは「空室がある施設を探すこと」ではなく、「その人らしい暮らしを続けられる環境」を見つけることでした。今回は、身寄りのない88歳男性が、行政書士と介護施設紹介会社の連携によって、新しい生活を安心してスタートできた実際の事例をご紹介します。
施設を変えたら終わりだと思ってました。88歳おひとり様男性が、施設の住み替えで取り戻した"当たり前の日常" (※写真はイメージです/PIXTA)

施設を探すのではなく、「その人らしい暮らし」を探すことが大切

高齢者施設を探すというと、多くの方は費用や空室状況、立地などの条件で選びがちです。しかし、実際にはそれだけでは十分とは言えません。

 

昭雄さんは長年、「自分には食物アレルギーがある」と思い込んでいました。ところが、入居先に併設されたクリニックで検査を受けたところ、医学的には特別な食物アレルギーは認められませんでした。その結果、食べられるものが少ないという長年の不安は解消され、新しい施設で安心して食事を楽しめるようになったのです。

 

新しい生活に少しずつ慣れてきた昭雄さんから、ある日こんな言葉が出ました。

 

「もう少し元気になったら、また自分で買い物に行きたい」

 

転倒後は寝ている時間が増え、住み替えにも不安を感じていた昭雄さんに、「もう一度やってみたいこと」が生まれたのです。

 

おひとり様だからこそ、「誰と連携するか」が老後の安心を左右する

今回の事例では、行政書士が身元保証や契約手続きを担当し、介護施設紹介会社は施設選びや見学、引っ越し支援を担当しました。行政書士が昭雄さんと長年継続して関わり、ご本人の生活歴や希望を把握していたからこそ、適切なタイミングで介護施設紹介会社へつなぐことができたのです。それぞれの専門職が役割を分担したからこそ、ご本人に合った住み替えを実現することができました。

 

高齢化が進み、おひとり様が増えるこれからの時代。必要なのは、「困ってから施設を探すこと」ではなく、「元気なうちから、相談できる専門家とのつながりを持つこと」です。

 

昭雄さんは新しい生活が始まって間もなく、笑顔でこんな言葉を話してくださいました。

 

「最初は施設を変えるのが怖かったんです。でも、私の話をちゃんと聞いてくれる人たちがいて、本当に安心しました。もう一度自分らしく生活できる場所が見つかって、本当によかったです」

 

おひとり様の終活というと、遺言書や死後事務委任など、「亡くなった後の準備」を思い浮かべる方も多いかもしれません。しかし、本当の意味での終活は、それだけではありません。

 

これからの人生を、どこで、誰とつながりながら、どのように暮らしていくのか。

 

そこまで考えておくことが、これからのおひとり様時代には大切なのではないでしょうか。昭雄さんの「もう一度、自分で買い物に行きたい」という言葉は、まさにそのことを教えてくれたように思います。

 

住み替えとは、人生をあきらめることではありません。その人らしい暮らしをこれからも続けるための、新しいスタートなのです

 

 

伊藤 昌陸

AOMA行政書士事務所

代表