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「妹ではなく、この人に残したいんです」…60歳女性が抱えていた切実な悩み
「先生、私が先に亡くなったら、パートナーはどうなるのでしょうか」
無料相談でそう切り出したのは、東京都内で暮らすまどかさん(仮名・60歳)です。まどかさんは会社員として長年働き、堅実に資産を築いてきました。両親から相続した財産も大切に管理し、金融資産は約1億円。生活に困ることはなく、老後への不安もほとんどありませんでした。
一方で、心の中にはずっと引っかかっていることがありました。それは、20年以上連れ添ってきたパートナーの存在です。2人は夫婦同然の生活を送っていましたが、婚姻届は提出していません。子どももおらず、法律上の配偶者でもありません。
「籍を入れなくても幸せでした。だから結婚という形にはこだわらなかったんです」
そう穏やかに話すまどかさんでしたが、終活を考え始めたことで、新たな不安が生まれました。
「私が亡くなったら、パートナーには財産を残せないのでしょうか」
法律上の相続人は、実家で暮らす妹だけです。妹とは仲が悪いわけではありませんが、何年も会っておらず、普段から連絡を取り合うこともありません。
「親の介護を支えてくれたのも、一緒に生活をしてきたのも、ずっとパートナーでした。もし私に何かあったら、いちばん感謝を伝えたい人に財産を残したいんです」
その言葉がとても印象に残っています。
近年、このような相談は決して珍しくありません。生涯結婚しない方や、おひとりさまとして暮らす方、事実婚という家族の形を選ぶ方、は年々増えています。家族のあり方が多様化する一方で、相続制度は必ずしもその変化に追いついているとは言えません。
「長年一緒に暮らしているのだから、当然財産は渡るだろう」
そのように考えている方も少なくありません。しかし、事実婚のパートナーには法律上の相続権がないため、何も準備をしていなければ、財産は法定相続人へ承継されることになります。
まどかさんも最初は、「遺言書を書けば大丈夫だろう」と考えていました。もちろん、遺言書は非常に重要です。しかし、お話を伺っていくうちに見えてきたのは、誰に財産を残すかだけではなく、「残されたパートナーが困らないようにしたい」という、これからの人生設計に対する思いでした。
遺言書だけでは十分とはいえない…おひとりさま・事実婚の資産承継で見落とされがちなこと
今回のまどかさんのように、「大切な人へ財産を残したい」という相談を受けた際、多くの方が最初に思い浮かべるのが遺言書です。
たしかに、事実婚のパートナーには法律上の相続権がありませんが、遺言書を作成することで財産を遺贈することは可能です。そのため、遺言書は資産承継を考えるうえで欠かせない制度の一つといえます。
しかし、実際の相談では、遺言書を作成するだけでは解決できない課題も少なくありません。例えば、「自分が長生きした場合の生活資金はどう確保するのか」「残されたパートナーが生活に困らないよう、どのような形で財産を受け取ってもらうのか」といった点は、遺言書だけでは十分に対応できないケースがあります。
さらに、おひとりさまの場合は、財産を残すことだけではなく、亡くなったあとのさまざまな手続きについても考えておく必要があります。病院や介護施設の精算、賃貸住宅の明け渡し、携帯電話や公共料金の契約解除、葬儀や納骨の手配など、相続とは別に必要となる手続きは数多くあります。こうした手続きは、遺言書だけでは依頼することができません。
私は、終活の相談を受ける際、「どの商品を選ぶか」ではなく、「どのような人生設計を描きたいのか」という視点を大切にしています。