「亡くなった夫と娘と同じお墓に入りたい」。それが、一人暮らしをしていた68歳女性の最期の願いでした。夫と娘のお墓がないため、霊園探しから開始。主任ケアマネジャーを中心に多くの専門職が連携し、その願いは実現しました。しかし、女性が亡くなったあと、それまで介護に関わることのなかった親族が現れ、「お金は適切に使われたのか」と支援内容に疑問を投げかけます。本人の意思を尊重して支援したにもかかわらず、支援者が疑われる――。この事例から、おひとり様の終活で本当に準備すべきことを考えます。
「こんな高いお金、何に使ったんですか?」68歳女性の病死後、終活支援をした主任ケアマネのもとに突如現れた〈まさかの人物〉【終活専門行政書士が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

「夫と娘と一緒のお墓に入りたい」――多職種が連携して願いを実現

68歳の綾子さん(仮名)は、1年前に夫と娘を相次いで亡くし、一人暮らしとなりました。脳梗塞の後遺症があり、要介護2の認定を受けて車いすで生活しています。聴力も低下していたため、集音器を使用していました。

 

綾子さんは日常生活に介助が必要な状態であり、夫と娘の遺骨と一緒にいたいという想いが強かったことから、お二人の遺骨はそのままの状態で自宅に置かれていました。

 

そんな綾子さんにすい臓がんが発覚し、残された時間が少ないことが判明します。最期に綾子さんの願いを叶えたいと、主任ケアマネジャーと日常生活自立支援事業の専門員はできる限りのサポートをすることにしました。

 

綾子さんが繰り返し話していた言葉があります。

 

「最期まで自宅で暮らしたい」

 

「夫と娘と3人で同じお墓に入りたい」

 

しかし、その願いをかなえるには多くの課題がありました。

 

まず、肝心のお墓がありません。さらに、綾子さんが自分の足でお参りできるように、何度も通える場所でなければ意味がありません。

 

そこで、綾子さんのサポートチームは何か所もの霊園を調べ、車いすでも通いやすいロッカー式納骨堂を探しました。霊園の調査は介護保険制度で定められた支援ではないため、ボランティアというかたちになります。それでも、「本人の人生を最期まで支えたい」という想いで全員が動いた時間でした。

 

その後も、綾子さんが自宅で最期まで生活できるよう、介護保険だけでは対応できない夜間の見守りを家事代行サービスで補填。多職種が連携して24時間体制を整えました。こうして、すい臓がんが発覚してから1年後、綾子さんは希望どおり自宅で穏やかな最期を迎えました。

 

「会ったこともない親族」の登場…主任ケアマネが直面した現実

多職種が連携した支援チームにより、綾子さんの願いは叶い、希望だった夫と娘と一緒のお墓に入ることができました。

 

ところがその後、主任ケアマネジャーのもとへ一本の連絡が入ります。相手は、これまで介護には一度も関わることのなかった、綾子さんの異母兄弟の弟でした。

 

弟さんからは、これまでの経緯やお金の使い道について説明を求められ、納骨堂についても疑問を投げかけられました。

 

「こんな高いお墓や24時間でサポートする体制にする必要があったのか。本人に判断力がないことをいいことに無駄な費用を払わせたんじゃないのか」

 

綾子さんが選んだロッカー式納骨堂は、決して安いものではありませんでした。しかし、それは単に「高いお墓」を選んだわけではありません。

 

車いすで生活していた綾子さんが、亡くなった夫と娘のもとへ、体が動くうちに何度でも会いに行けること。綾子さんの死後も夫や娘と一緒にいられる永代供養がつけられること。ロッカー式納骨堂は、そうした綾子さん自身の希望を一つひとつ考えた末に選ばれた場所だったのです。また、24時間体制も、残り少ない時間を自宅で過ごしたいという綾子さんの願いをかなえるためには、欠かすことのできない体制でした。

 

それでも、介護中には一度も姿を見せなかった親族が、相続をきっかけに現れ、その支出に疑問を投げかけたのです。もちろん、支援チームは綾子さんの意思を尊重し、必要な契約や支払いを適切に行っていました。しかし、本人が亡くなったあとでは、その意思を証明してもらうことはできません。

 

主任ケアマネジャーは、「本人の願いを叶えられたことに後悔はありません。しかし、最後に疑われてしまったことだけが心残りでした」と振り返ります。

 

おひとり様の支援では、このように支援者自身が説明責任を求められる場面が少なくありません。