「私に何かあった時のために、身軽になっておきたいんです」。近年、おひとり様から終活の相談を受けるなかで、この言葉を耳にする機会が増えました。遺言書や財産の承継については準備を始めていても、お墓の承継まで考えている方は決して多くありません。後継者がいないため、自分で先祖代々の墓を閉じなくてはならない――そんな墓じまいを検討した56歳男性の相談事例を通して、おひとり様時代のお墓との向き合い方について考えます。
「もしこのまま帰ってこられなかったらって、不安になったんです」――おひとり様を満喫する56歳男性、がんが見つかり墓じまいを決意【終活支援専門の行政書士が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

「自分にもしものことがあったら…」がんをきっかけに始まった終活

東京都内で一人暮らしをする健さん(56歳・仮名)は、唯一の家族だった両親を見送り、充実したおひとり様生活を送っていました。仕事も順調で、休日は趣味を楽しみ、一人暮らしに不自由を感じることもありませんでした。

 

「終活なんて、自分にはまだ早い」

 

そう思っていた健さんでしたが、健康診断でがんが見つかったことをきっかけに、その考えは大きく変わります。幸いなことに早期発見だったため、治療は順調に進みました。

 

しかし、入院手続きを進めるなかで思わぬ壁に直面します。身元保証人をお願いできる人が見つからなかったのです。親はすでに他界し、配偶者も子どももいません。

 

「もし病気がもっと進行していたら……」

 

「もし、このまま帰ってこられなかったら……」

 

そんな不安を抱えた健さんは、退院後、知人の紹介を受けて私の事務所を訪ねて来られました。

 

「自分が元気なうちに、できることは整理しておきたい」

 

そう考え、健さんは遺言書や死後事務委任契約について私に相談をしてくれました。相談が一段落し、私が健さんの実家について確認したところ、長野県にあるお寺に、実家のお墓が残っているとのことでした。

 

「管理料だけは払っていますが、それ以外は何もできていないです」

実家のお墓は、ご先祖様から代々受け継がれてきたもので、両親の遺骨も納められている大切なお墓です。現在は健さんが毎年管理料などを支払っていますが、健さんには子どもがいません。

 

「管理料だけは毎年払っているのですが、ここ数年全くお墓参りに行けてないです」。そう話す健さんの表情からは、何とかしなくてはと思いながらつい後回しにしてしまっていた悩みが伝わってきました。おひとり様の終活では、遺言書・財産管理・死後事務委任のほか、お墓をどうするかも大きな課題です。