(※写真はイメージです/PIXTA)
「このままここで暮らし続けるのは難しいですね」突然訪れた住み替えの決断
東京都内のサービス付き高齢者向け住宅で約3年間暮らしていた昭雄さん(88歳・仮名)は、配偶者も子どももおらず、長年一人で生活を続けてきました。昭雄さんには身寄りがなかったため、入居当初から行政書士が身元保証や契約手続き、生活支援などを継続して担当していました。
そんな昭雄さんに転機が訪れます。めまいで転倒したことをきっかけに、寝ている時間が徐々に増えていったのです。施設職員からは、「24時間介護が受けられる施設への住み替えも考えた方が良いかもしれません」と提案されます。しかし、昭雄さんには不安がありました。
「知らない場所へ行くのは嫌だ」
「食事が合わなかったらどうしよう」
施設を変えることは、今までの生活環境がすべて変わってしまう不安との戦いでもありました。
そこで私は、長年連携している介護施設紹介会社へ相談しました。同社の担当者は昭雄さんと何度も面談を重ね、「今の住まいから近い」「外来受診がしやすい」「車いすでも見学できる」「引っ越しのサポートをしてもらえる」といった希望を一つひとつ確認しながら新しい施設探しを進めていきました。
おひとり様が施設へ入所するときに必要な手続き
おひとり様が実際に施設へ住み替えることになった場合、どのような手続きや準備が必要になるのでしょうか。
高齢者施設への住み替えは、「入居する施設を決めれば終わり」というわけではありません。実際には、次のようなさまざまな対応が必要になります。
- 入居契約
- 身元保証
- 医療・介護に関する手続き
- 住所変更
- これまで住んでいた住居の整理
家族がいる場合には、本人と相談しながら家族が手続きをサポートすることができます。しかし、おひとり様の場合は「誰が手続きを支援するのか」「施設から緊急連絡があった場合は誰が対応するのか」「入院が必要になった場合はどうするのか」「これまで住んでいた家や荷物をどうするのか」といった問題までを考えておかなければなりません。
昭雄さんのケースでは、新しい施設への入所に伴い、下記の手続きを行いました。
1. 施設の契約手続き
施設から重要事項や契約内容について説明を受け、費用、サービス内容、退去条件などを確認しました。
2. 身元保証・緊急連絡先の対応
入居にあたって身元保証人や緊急連絡先などの対応を行いました。
3. 死後事務委任契約の締結
昭雄さんが亡くなったときの備えとして、次のことを定める死後事務委任契約を締結しました。
- 葬儀や納骨を誰に任せるのか
- 施設に残された荷物を誰が整理するのか
- 携帯電話や各種サービスを誰が解約するのか
4. 遺言による財産の行く先の整理
昭雄さんは財産を菩提寺へ遺贈することを希望されていたため、ご本人の意思を遺言書として残し、亡くなったあとの財産の行き先についても整理しました。
死後事務委任契約と遺言は似ているようですが、役割は異なります。死後のさまざまな事務を誰に託すのかを決めるのが死後事務委任契約で、財産を誰に引き継ぐのかを決めるのが遺言です。
このように、おひとり様の施設入所には、「住まいを替える」ということ以上に多くの課題があります。だからこそ、施設への入居を一つのきっかけとして、「これからの生活を誰に支えてもらうのか」「亡くなったあとのことを誰に託すのか」までを考えておくことが大切なのです。