「前と同じようにバリバリ任せるべきか」「急な休みに備えて簡単な仕事に抑えるべきか」――。育休・産休から復帰した部下を迎える際、多くの管理職が仕事の任せ方に頭を悩ませます。お互いに「よかれと思って」取った行動が、かえってすれ違いを生んでしまうケースも少なくありません。本記事では、吉田直実氏の著書『中間管理職の生存戦略 自分の「思い込み」に気づき最適解を見つける本』(ごきげんビジネス出版)より、育休・産休から復帰した部下への対応についてみていきましょう。
「戦力外にされた気分です…」育休・産休から戻った部下に雑務だけを任せた上司、〈配慮のしすぎ〉が生むジレンマ (※写真はイメージです/PIXTA)

面談では「どれだけ働けるか」と聞かない

1.「対話設計型」を選択してみるのはどうでしょうか。復帰後の任せ方は「制度」よりも、まず「対話」の場を設けることが重要だと考えるからです。

 

復帰前または復帰直後に、30〜60分程度の1対1面談の時間を必ず確保します。「今の生活と体力のイメージ」「突発的に抜ける可能性」「キャリアプラン」を、責めずに丁寧に聞きましょう。このとき、「どれだけ働けるか」ではなく、「どんな条件なら無理なく力を発揮できそうか」と、前向きな問いを使います。

 

ホワイトボードや紙を使い、「絶対に担当してほしい仕事」「できればお願いしたい仕事」「手放してよい仕事」の3分類で一緒に整理します。

 

時間単位の議論だけでなく、「このポジションは継続してもつか」「顧客対応はどのレベルまで担うか」といった役割の線引きも言語化しましょう。そのうえで、「3か月後にこの範囲まで広げる」「半年後にここをもう一度見直す」と、見直し時期もセットで合意します。

 

あわせて、本人に対して「あなたを戦力から外すことは考えていません。今の状況の中で、一番力を発揮できるかたちを一緒につくりたいと思っています」と伝えます。このように言葉にしておかないと、本人は「迷惑をかけている負い目」から、遠慮して本音を出せなくなるのです。

 

面談内容を簡単にまとめ、本人と共有しましょう。2〜4週間ごとに、「情報共有したとおりにできているか」「何がしんどいか」を振り返る場を設け、必要に応じて軌道修正します。復帰は一度きりのイベントではなく、「対話しながら調整を続けるプロセス」だと捉えることが上司としての重要な役割だと考えます。

育休・産休からの復帰…2つの思い込みが適切な仕事の采配を阻む

「配慮」とは、なんでしょうか。それは「特別扱いして甘やかすこと」ではなく、「その人が力を発揮できる条件を整えること」ではないかと思うのです。育休・産休からの復帰において、私たちは無意識に2つの極端な思い込みにとらわれがちです。

 

1つ目は、「子育て中だから、責任ある仕事は負担だろう」と決めつけて、成長機会を遠ざけてしまう保護的なバイアス。2つ目は、「同じ給料なら、同じだけ働いて当然だ」という発想で、時間の長さだけを物差しにしてしまう、結果の平等志向です。

 

しかし、本来仕事は「何時間そこにいたか」よりも、「どんな価値を生み、どう貢献したか」で測られるものです。制約のある人に対してこそ、その原則を丁寧に適用しなければ、「守る」を口実に期待値を下げ、「戦力外扱い」という別の不公平を生んでしまいます。

 

本人側にも、「迷惑をかけたくないから、頼まれたことは全部引き受けなければ」という完璧主義が働きます。その結果、心身をすり減らし、結局は長く働けなくなることさえあるでしょう。上司が「無理はしないで」と言いながらも、実際に求めているのは「以前と同じパフォーマンス」であれば、それもまた矛盾したメッセージです。

 

だからこそ、配慮とは「期待を下げること」ではなく、「期待のかたちを変えること」だと、捉え直す必要があります。時間や働き方の制約を受け入れながら、その人らしく価値を出せる役割をともに設計していくことこそが、組織にとっても、本人にとっても、長期的にプラスになる本当の「配慮」ではないでしょうか。

 

今一度、自らに問い直したい。自分は部下を「守る」という名目で、知らず知らずのうちに「期待を下げる配慮」や「時間だけを物差しにした公平性」にとらわれていないだろうか。

 

 

吉田 直実
なおみ税理士事務所 代表
元国税職員/一般社団法人日本推進カウンセラー協会認定 認知行動療法士

 

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