娘から、突然切られてしまった帰宅報告の電話。その背景には、親世代には見えにくい「子世代の経済的な厳しさ」がありました――。総務省の「家計調査報告(2025年平均)」によると、二人以上の世帯のうち勤労者世帯の可処分所得は1ヵ月平均53万2,408円ですが、物価上昇の影響を除いた実質では前年比1.7%の減少と、実際の生活のゆとりは目減りしています。世帯主の年齢別に見ると、40歳未満の世帯の月平均消費支出は30万1,216円、40〜49歳の世帯では35万3,622円に達しており、手取りが減るなかで日々の生活を回すのは容易ではないでしょう。現代において夫婦共働きを維持することは、家計を守るための「必須条件」になっているのが実情です。しかし、世代間のギャップから親のよかれと思った助言が「地雷」となってしまうケースも。事例を見ていきます。※事例の人物名はすべて仮名です。
「電話、途中で切られました…」夏休みに孫を連れて帰省してくれた38歳娘の帰宅報告の連絡、“ブチ切り”された理由。年金19万円・69歳両親が知らずに踏んだ「地雷」 (※写真はイメージです/PIXTA)

夫不在の「ワンオペ帰省」…疲弊する娘の日常

地方で年金19万円を受給し生活を営むヒサオさん(69歳)とトモコさん(69歳)夫妻は、この夏、都内に住む娘のマイさん(38歳)と幼い孫2人が帰省してくれるのを楽しみにしていました。

 

マイさんの夫・コウヘイさん(40歳)は都内の中小企業に勤務しており、仕事が非常に多忙です。今回の帰省のタイミングでも休みが取れず、マイさんと小学校2年生の娘、幼稚園児の息子の3人だけで実家へ帰ることになりました。

 

夫が多忙なこともあり、働きながら、幼い子ども2人の面倒をほぼ1人でみているマイさんの日常は、常に時間に追われています。それでも「親に孫の顔を見せてあげたい」と、3人分の重い荷物を抱え、騒ぐ子どもたちをなだめながら新幹線に乗り、実家へと向かいました。

スマホ育児への苦言と、専業主婦の姉との比較

滞在中、マイさんが子どもたちへスマホを見せていると、母のトモコさんは不満そうな様子を見せました。「子どもにスマホばかり見せて、スマホ育児っていうんでしょ。あんまりよくないわよ」と苦言を呈したのです。ヒサオさんも、スマホに夢中で祖父母とコミュニケーションを積極的に取ろうとしない孫に難色を示し、同調します。

 

マイさんは無制限にスマホを見せているわけではなく、時間や内容のルールを決めたうえで活用していました。そうした工夫や事情をトモコさんとヒサオさんに説明しますが、どうにも伝わっていないようです。

 

さらに、トモコさんはこう重ねました。

 

「コウヘイくんだってきちんとお勤めしているんだし、この子たちが中学生になるくらいまで家庭に専念してあげたら? そうしたら、スマホにだって頼らずに済むでしょう。あなたの姉さんを見てみなさい。家庭に専念して、子どもたちもいい子に育っているじゃない」

 

実の姉の夫は外資系コンサルに勤めており、姉は専業主婦として子育てに専念しています。一方で、マイさん夫婦はともに中小企業勤務。マイさんの年収が540万円、夫のコウヘイさんが年収650万円で、世帯年収は1,190万円です。都内で住宅ローンを払い、これから本格化する子どもの教育費を考えると、夫1人の収入だけで家計を回すゆとりはありません。

 

専業主婦として自分たちを育ててくれた母への感謝もあり、「できることなら家庭に入って子どもと向き合いたい」という思いがマイさんにもないわけではありません。しかし、現状は共働きをしなければ立ち行かないのです。できる限りのことをやって必死に踏ん張っているマイさんにとって、親から「仕事を辞めなさい」「姉のようにしなさい」といわれることは、なにより心に刺さる言葉でした。