高齢になった親の通帳管理を特定の親族に委ねることで起きる「不透明な資産管理」は、家族間のトラブルの原因になりかねません。ある家族の事例を通じ、親族間の断絶を防ぎ、正しく資産を守るための対策について考えます。
「文句があるなら証拠を出しなさいよ!」〈預金3,500万円〉82歳義母の通帳を握った57歳義姉、〈2,500万円の使い込み〉の末路 ※写真はイメージです/PIXTA

一般家庭を狙い撃つ税務署の監視網

しかし1年後、事態は急転直下します。義姉のもとに税務署から税務調査の連絡が入ったのです。

 

最高裁判所事務総局『司法統計年報(家事編)』によると、家庭裁判所で認容・調停が成立した遺産分割事件のうち、実に78.0%(1,000万〜5,000万円以下:35.6%、1,000万〜5,000万円以下:42.4%)を「遺産総額5,000万円以下」の一般的な家庭が占めています。多くの人が「うちは資産家ではないから関係ない」と思い込み、安易な現金引き出しを行ってしまうのです。

 

税務署は国税総合管理システム(KSK)を活用し、亡くなった人の過去の資産や親族の口座履歴を監視しています。静子さんの資産推移から「5,000万円以上の財産があるはずだ」と試算しており、申告がないことを不審に思ったのでしょう。

 

また、決定打は義姉の口座履歴でした。義母の口座から2,500万円が引き出されていた時期と一致して、義姉名義の住宅ローン2,100万円が一括返済されていたのです。

 

国税庁『相続税の実地調査等の概要』によれば、無申告事案に対する調査での非違率は85.7%に達します。「ATMで現金で引き出せばバレない」という義姉の隠蔽工作は、即座に見破られました。

 

税務調査の結果、引き出された2,500万円は「隠匿された相続財産」と認定されました。本来の遺産総額は5,000万円と再計算され、基礎控除を超える部分に相続税が課されます。さらに悪質な資産隠しとみなされ、最高40%の重加算税や延滞税が重くのしかかりました。追徴課税は数百万円に上ります。

 

すでに義母のお金をローン返済に使い果していた義姉に、現金の持ち合わせはありませんでした。

 

「義姉は青ざめた顔で『お金を貸して。家を競売にかけられる』と夫に泣きついてきました。でも夫は『自業自得だ』と言い放ち、着信拒否にしました」

 

結局、義姉は完済したばかりの自宅を手放して追徴金を納付することになりました。

 

不透明な引き出しを防ぐには、親が健全なうちに財産目録を作成し、特定の親族による「密室管理」を作らないことが重要です。