老後の安心を求めて検討される老人ホームですが、十分な資金や高い評判を信じるだけでは防げない落とし穴が存在します。ある男性が直面した葛藤を通じ、条件面や口コミだけでは見抜けない「住み替えの落とし穴」を解き明かします。
「もう、無理。限界……」〈退職金2,000万円〉〈年金月20万円〉72歳元公務員男性、口コミを信じた「老人ホーム入居」の末路 ※写真はイメージです/PIXTA

わずか1カ月で決断、100万円超の代償

限界を感じた鈴木さんは、入居からわずか1カ月で退去を決意しました。

 

しかし、入居一時金500万円のうち初期償却として20%(100万円)が控除され、さらに1カ月分の償却費や月額費用が引かれました。結果として、わずか30日間の滞在で約120万円もの資金を失うことになったのです。


退去後、鈴木さんは住み慣れた戸建ての自宅へ戻りました。静かな我が家に一人で戻った夜、鈴木さんは深く息を吐きました。金銭的な痛手は大きかったものの、あの騒音から解放されたことには安堵しました。

 

「ホームは、きちんと見学もして決めたんです。ただ、見学のときは気持ちも高揚していて、“音”の問題に気づけなかった。たとえ気づいたとしても、見学と実際に生活するのでは違う。結局、同じような結果になったと思う」

 

老人ホーム選びでは、費用や立地、設備、口コミだけでなく、「今の自分の状態や生活スタイルに合っているか」を考えることも大切です。特に自立している段階で入居する場合、介護を必要とする入居者が多い施設では、想像以上のギャップを感じることもあります。

 

また、見学だけでは、実際の生活音や時間帯による雰囲気の違いまでは分からないことがあります。可能なら時間帯を変えて見学したり、居室で音を確認したり、体験入居を利用したりするのもひとつの方法です。「評判がいいから安心」ではなく、そこで自分がどんな毎日を送るのか。そこまで考えて施設を選ぶことが、住み替え後の後悔を防ぐポイントといえそうです。