早期退職を果たし、理想の生活を手に入れたはずが、家族からの理解が得られない――不労所得で暮らす親の姿は、子どもにどう映るのでしょうか。あるFIRE男性の葛藤から、従来の労働観に囚われない生き方と、家族との良好な関係を保つために必要な「仕事や社会との向き合い方」について探ります。
「父は家でダラダラしています」〈資産1億5,000万円・46歳のFIRE男性〉、ひとり娘の〈夏休み日記〉に綴られた「蔑みの数々」 ※写真はイメージです/PIXTA

「誇れる父」であるために選んだサイドFIRE

「お父さんは、ちゃんと配当収入を得ている……10歳の子には、ちょっと難しかったようです」

 

とはいえ、娘には「誇れる父」でいたいという強い思いがあります。そこで完全に仕事を辞めるのではなく、社会との接点を持つ「サイドFIRE」への移行を決意したのです。

 

まず、週に2日、地元のプログラミング教室で講師として働き始めました。時給は2,000円ほどで、毎月の収入は5万円程度です。お金は重要ではありません。決まった時間に家を出て働く姿を娘に見せることが目的でした。さらに、週に1日は地域のボランティア活動に参加し、小学生向けのIT体験イベントの運営を手伝うようになりました。


「働く姿を見せるようになってから、娘の態度は少しずつ柔らかくなりました。私のことを『パソコンを教えている人』『ボランティアを頑張る人』と認識し始めたようです」

 

現在、大輔さんが毎月得ている5万~10万円程度の給与は、そのまま子どもの将来のために積み立てているといいます。

 

「娘も段々と会社に依存しない生き方がわかってきたように思います。『うちのお父さん、以前は大きい会社で働いていたの。今は頑張って貯めたお金があるから、嫌々働かなくていいんだって』などと、友人に話しているようです」


資産運用などの不労所得で生活費をまかない、定年前に仕事からリタイアする生き方であるFIRE。完全に仕事をしない「ファットFIRE(Fat FIRE)」や「リーンFIRE(Lean FIRE)」のほか、会社には所属せずに自分らしく働きながら収入を得る「サイドFIRE(Side FIRE)」、会社に所属して不足分を補充する「バリスタFIRE(Barista FIRE)」などのスタイルがあります。

 

FIRE後にどのように生き、どう家族と向き合うか――それによって、理想とする形は変わります。娘の素直な一言をきっかけにサイドFIREへシフトした大輔さん。「嫌々働かない生き方」を自ら体現してみせる父の背中は、変化し続けるこれからの時代を生きる娘にとって、たくましく誇らしい道しるべとなっていくはずです。