内閣府の『令和7年版高齢社会白書』によると、日常生活に制限のない期間を示す「健康寿命」は、令和4年時点で男性が72.57年、女性が75.45年となっています。この統計が示すとおり、70代半ばに差し掛かる親世代は、日常生活は自立して送れていても、少しずつ体力や免疫力の低下を自覚しはじめるデリケートな過渡期にあります。そのような親にとって、子ども家族の帰省は、嬉しいだけではない気持ちもあるようです――。Aさん親子の事例から、お互いに無理のない持続可能な帰省ルールを探っていきます。※個人の特定を防ぐため、事例は一部脚色しています。
「早く東京に帰れ!」…お盆に家族で実家へ帰省した40歳息子が踏んだ、両親“怒りの地雷”。父親が孫を連れた嫁に〈10万円〉を渡したワケ (※画像はイメージです/PIXTA)

爆音のYouTube、脱ぎっぱなしの靴…遠慮ない態度に緊張感の漂うリビング

「久しぶりの実家は落ち着くね」と夫Aさん。広くもない実家のリビングで2台のキャリーケースを広げ、子どもたちのためにYouTubeをテレビに繋ぎ、騒がしい音声が家中に溢れました。その後、動画に飽きた子どもたちはソファを飛び跳ね家中を走り回りますが、Aさんが注意することはありません。

 

それだけでなく、Aさん自身もまた、一つひとつの言動に遠慮がありません。玄関のドアは開けっ放し、スリッパや靴は揃えられず乱雑に散らかっています。

 

さらに、Aさんは「子どもが熱中症になったら大変だから」と冷房を20度に設定。冷え性の母親は、35度を超える真夏だというのにカーディガンを羽織り、膝掛けをかけて耐えるしかありませんでした。「寒いから少し温度を上げてもいい?」と母親が遠慮がちに聞いても、「子どもがいるから無理だよ」のひと言で押し切られてしまいます。「年寄りはすぐにエアコンを切りたがるよね。だから熱中症になるんだよ」という始末。

 

Aさんはリビングのソファに足を広げて座り、スマホを眺めながら「お母さん、冷たいお茶ある?」「今日の夕飯なに?」と、まるで中学生のよう。そんな夫の様子を見ていたBさんは、このままではまずいと、当初の不穏な空気に確信を持ちます。夫に対し「あなたの家じゃないんだから、もう少しお客さんの態度をして。もうこの家の人じゃないでしょ?」と注意しますが、Aさんは納得がいかない様子です。

 

「え? だって俺んちじゃん。実家なのに他人行儀っておかしくない?」

 

Bさんは夫の幼稚な考え方に呆れ、「いい加減にして。私が気まずいの」と耳打ちしますが、夫は理解できない様子。子どもたちを誘って庭に出て、プールを出して水道から水を大量投入。子どもと一緒になって大きな声を出し、水をかけ合い、遊びはじめました。

 

そんな様子を黙って見ていた父親は憮然とした表情で新聞を読んでいますが、家のなかはどんどん緊張感が漂います。

 

「お義母さん、私なんでも手伝うので」とBさんは立ち上がりましたが、義娘に気を遣っているのか、「東京から来て疲れているでしょうから、手伝いはいらないわよ」と断ります。「それに、お盆に実家に帰ったら召使いのようにいろいろ手伝わされたって人多いじゃない? 私はそんなことしないから安心して」。そういわれると、Bさんも返す言葉がありません。

 

そんなやりとりの最中も、夫Aさんは、冷蔵庫を開けてなにやら断りもなく食べはじめる有様です。「ウィンナーがたくさんあるけど、こんなの毎日食べてるの? 加工肉は年寄りにはよくないよ」などと論評まで加えながら。