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重くのしかかる「帰省負担」
「今年は、いつ帰ってくるんだい?」
東京都内で会社員として働く山田健一さん(49歳・仮名)のスマートフォンに、母・和子さん(76歳・仮名)から電話がありました。
「お盆は3日くらいはいるから」
そう答えながらも、健一さんの表情は晴れません。実家は山形県。新幹線を乗り継ぎ、駅から車で40分ほどかかります。一方、妻・由美さん(47歳・仮名)の実家は静岡県です。
盆も正月も、どちらか一方だけに帰るわけにはいきません。まずは山形に行き、そのあと少し日を置いて静岡に向かう、というのがいつものパターンです。
共働きの健一さん夫婦。世帯年収は約900万円、住宅ローンは残り1,480万円。高校2年生の長男と中学3年生の長女がおり、教育費は毎月約11万円。住宅ローン返済が月8万9,000円。特に教育費は今後負担が大きくなることは確実で、山田家の喫緊の課題でした。
そのようななか、山田家にとって帰省は大きな負担。新幹線代やレンタカー代を含めれば、山形帰省では約18万円かかります。夫婦双方の実家に行くとなると、30万円の出費は覚悟しなければなりません。
一方、和子さんは年金月12万円が生活のベース。8年前に夫を亡くしてからは、築52年の一戸建てで一人暮らしを続けています。
「私はまだ元気だから」
電話では必ずそう言います。
しかし、お盆に帰るたび、小さな変化が増えていました。一番、分かりやすく感じているのが庭。以前であれば美しく整えられていましたが、最近は草が長く伸びていることも。そのような庭を眺めていると、和子さんは決まって「いつの間にか、こんなに草が伸びてる。きれいにしないとね」と、いそいそと庭に出ようとします。「もう庭は放っておけばいいじゃない」と言うと、「お父さんが大事にしてた庭だから」と返答する――お決まりのやり取りでした。
一方、義実家にも事情があります。義父は糖尿病を患い、義母も車を手放しました。「うちの親も歳を取ったから」と妻がぽつり。そしてある晩、帰省の日程を決める話し合いで、妻は静かに口を開きました。
「負担が大きいから、それぞれの実家への帰省は、年に1回にしない?」
国立社会保障・人口問題研究所『第7回全国家庭動向調査(2022年)』によると、別居する「近いほうの母親」との居住距離が「60分未満」である割合は72.1%に上ります。一方で、有配偶女性(妻側)から見た実親との居住距離が「60分以上(遠居)」である割合は、母親で40.7%、父親で42.5%。
約7割の世帯が日常的な支援を得やすい「近居」を選択する一方で、山田さん夫婦のように双方の実家が遠方にあり、金銭的・時間的な帰省負担を伴う「遠居」に該当する世帯も約4割。実家との距離感は家族の生活設計における大きな課題となっています。