(※写真はイメージです/PIXTA)
生きがいだった車の運転、起きてしまった悲劇
地方で暮らすサツキさん(81歳)にとって、愛車でのドライブはなによりの生きがいでした。景勝地や買い物に一人で出かけることが元気の源だったのです。
都内に住むユミさん(57歳)は、母が70代後半を超えたあたりから「そろそろ免許を返納してほしい」と頭をよぎっていました。しかし、田舎町で車を取り上げることは母の足をもぎとり、生きがいを奪うことにほかなりません。ためらいを感じていえないまま時間が過ぎていた矢先、最悪の事態が起こります。
サツキさんが運転中にハンドル操作を誤り、交通事故を起こしてしまったのです。幸いにも他人にケガはなく、サツキさん自身は足を骨折したものの命に別条はありませんでした。しかし、知らせを受けて駆けつけたユミさんは、恐怖と焦り、そして安堵が混ざり合った感情から、病院で思わず激しい言葉を母にぶつけてしまいました。
「お母さんが死ぬならいいけど、誰か人様を殺めてしまっていたらどうするの!」
その一言に、サツキさんは意気消沈してしまいました。事故によるケガの療養で長期間ベッドの上で過ごすうちに、急速に足腰が衰え、自力での歩行すら危うくなってしまったのです。
遠距離介護の限界と老人ホームへの入居
退院後、一人で暮らせなくなった母をどう支えるか。ユミさんには自身の仕事や家庭があり、地方の実家へ戻って同居介護をする選択肢はありませんでした。遠距離で通うのも限界があり、やむを得ず「高齢者施設への入居」を母に勧めました。
ここで立ちはだかったのが「お金のやりくり」です。サツキさんの収入は、支給される公的年金の「月額12万円」のみ。行政が運営する特別養護老人ホームであれば月額10万円前後に抑えられますが、当時は要介護度の条件や待機者の多さから、すぐには入居できませんでした。
そのため、比較的スムーズに入れる民間の「有料老人ホーム」を選択することに。
施設の月額利用料:約20万円(管理費・食費・介護サービス自己負担分を含む)
サツキさんの年金:月額12万円
毎月の収支差額:約8万円の赤字
年金だけでは毎月8万円が不足します。母が亡き父と蓄えてきた約600万円の預貯金を取り崩しながら補填する計算を立てました。「貯金が底をつくまでの約6年間で、どうにか特養へ転居させるか、対策を考えよう」――サツキさんは、そう自分に言い聞かせます。